映画音楽の入るポイント、曲調など。個人的なまとめ・2

映画音楽の入るポイント、曲調など。個人的なまとめ・2

前回の記事(映像音楽の入るポイント、曲調について。個人的なまとめ)がそこそこ反響あったみたいで…ありがとうございます。

正直、個人的に今後の制作で参考になるかなー程度で聴いて感想をまとめただけだったんですが、まさかそんなに読まれるなんて。

前回の記事はドラマ、TVシリーズに絞ったので、今回は映画についてまとめます。


映画音楽の劇伴まとめ・参考にしたもの

ざっくりと最近の映画(2015~2017年公開のものに絞りました)の劇伴をまとめると、以下のようになります。私が注意して聞いた中で、の話なので、読んでる方からしたら「何を今更…」ってのものあるかも知れません。そこは申し訳ない。

・生楽器、シンセでの構成が中心という印象
・シンセは結構シンプルな音作り(パルス系、SE的にノイズがジーって入るなど)
・音の距離がセンターより左右が近い、リバーブがレコーディングブースそのまんまな凄くナチュラル感
・メロディらしいメロディってのがそんなにない
・劇中、割と音楽がひっきりなし

ドラマシリーズとの大きな違いってほど大きくもないんですが、音楽が占める割合かなーと。15分観てる中でテーマソング抜いても3分置きに曲が入る感じがします。音楽が入らないポイントは、主人公が誰かと向き合って話しているシーンや会議のシーンなど、やっぱり会話のシーンは入らない。

ちなみに参考にした映画は下記。

・Great Wall(中国の映画) – 2017
・Jack Reacher:Never Go Back – 2016
・Fifty Shades Darker – 2017

中国の映画って、それこそジャッキー・チェンくらいしか分からないし、そもそも制作が中国だったのかも覚えてないんで、結構新鮮でした。残り二本はアメリカの映画ですね。

あとサメ映画2本観ました。せっかくなのでそれも交えて、映画音楽の話をしていきます。

アンダースコアという音楽の考え方

その前に、「アンダースコア」という考え方を紹介したいと思います。

「背景音楽」なんて日本語訳されています。単にスコア、とだけいうこともあるそうです。

ざっくりいうと、「映像や演劇の後ろで、シーンや演技の雰囲気や意味を濃くするための、でも前には出さない音楽」のことを指します。まさしく映画音楽のことですね。メロを入れないっていう点が、主張を控えるためのポイントなんだろうな。

このアンダースコアがどんな音楽かっていうのが、海外(主にアメリカとUK)とアジア圏では全然違うなっていうのが分かってきました。映画の話に戻ります。

Great Wall(中国の映画) – 2017

マット・デイモン主演の、中国のSF的な映画です。万里の長城を拠点に、億単位のバケモノの群と戦う映画でした。これだけ書くとB級臭ぱねぇ…。

音楽をざっくりまとめると、以下。
・会話のシーンも結構音楽を入れてる(ふわっとしたもの、戦闘シーンに繋がるもの、etc)
・メロディは1分・2分音符のもの、ストリングスでの構築がメイン
・激しい太鼓がどんどこ入る、ホルン、トロンボーン、チェロ、コンバスで重々しいってのが多い
・オーケストラ曲が多め、所謂Cinematicなもの。時折民族楽器を混ぜる
・コード進行や音作り的な部分で新しい技法的なものはあんまり感じない。オーソドックスにシンプルに

みんながイメージする、The Cinematicな曲が多い印象でした。太鼓がズドンズドン鳴って、ブラスの力強いメロディがあって。初期のTwo steps from hellとか、ああいう感じ。

凄い!カッコいい!っていう印象はもちろんあるんですが、曲が大げさというか、ちょっとわざと臭いというか、違和感覚えました。音楽がほぼずっと鳴りっぱなしで、環境音とか会話とかがあまり聞こえて来なかったせいかも知れません。人の足が地に着いていないような、なんか浮いた?印象。

あと、8dio majesticaみたいな、シネマティック系のオーケストラ音源と民族楽器ちょっと足しただけっていう音が気になった。作曲自体はそりゃもう素晴らしいんですが、よく聞く音だなって。これ良くないですよね。

ちなみに作曲者はRamin Djawadi氏、ハンス・ジマー傘下だそうです。なるほどだからあの壮大さ。合点。

Jack Reacher:Never Go Back – 2016

トム・クルーズ主演のアクションもの。主人公は刑事ではないんだけど、刑事ものっていう言葉が一番合うんだろうか?犯人を追っていく系。

まとめると以下。
・全体的に主張の少ない音楽、メロディらしいメロディはなく、刻む感じかドローンか
・ジャックが何か感づいた、敵が追い始めたなど、何か動きがある時に音楽が入る感じ
・曲はそんなに多くない
・逃げる、戦闘シーンでBraaaamブラスが入る
・シンセ、生楽器のハイブリッド

さっきの映画とはジャンルがまるで違うってのはもちろんあるんですが、かなり大人しい感じ。リズミックなシンセとストリングス、たまにブラスがぶわああああああっと入るだけ。

これこそアンダースコアっていうのが非常に顕著、自然なリバーブ、主張は少ないけどガッチリ雰囲気を作ってく音楽っていう感じ。

音作りがすごーく良くて、「ヴィンテージのフェンダーUSAストラトをマーシャルJCM800を屋内のステージで鳴らした感じ」っていうとギタリストはあぁーってなると思うんだけど、芯がある太い音、リバーブは後付けしてないかのような響き。ストリングスもシンセも。

音楽の好みでいうと俄然Great wallなんだけど、目指すべきはこっちなのかなー?って思いました。作曲者はHenry Jackman氏。X-Men、キック・アス、キングスマンなど。…くまのプーさん(2011)も。

Fifty Shades Darker – 2017

いやーもうこの映画一人で観てて良かったよ!いきなりセックス!そしてソフトSM!!どうしようかと。恋愛ものではあるんですが、ちょっと過激でした。R-18+ですし。

音楽のまとめは以下。
・基本的に生楽器のみ、角の立ってないソフトな音、ソフトなピアノ
・ストリングスはロングトーン、ピアノとギターは軽いアルペジオ
・ハーモニクス(シマーっていうの?オルガンの高い成分だけみたいな音)、シンセベースみたいなシンセパッド、重いパルスもよく混ぜる
・肝心のエロシーンは歌もの、ジャンル様々

割と音楽は少なめ?主人公の心情の変化がある時にフワッと入ってくるっていう印象でした。不安になって黙りこんだとき、彼氏に家に送ってもらう時、会社から出て全く知らん人に声かけられた時など。あと賢者タイム。

セックスシーンは歌もの。これは多分、アーティストの曲を借りたんだろうな。やや明るめ、ジャンル様々な曲が入りました。映画の中心がここにあるためか、全体的にスコアは少ないっていう印象です。

音作り、作曲面で目新しさはないものの、物凄く手馴れてる感が聞いて取れます。それもそのはず、作曲者はDanny Elfman氏でした。ティム・バートンの映画は大体、ダニー。ヘンテコな世界だけじゃないんだね!って思ったけど、この映画も十分浮世離れしてたわ。

豪華2本立て!サメ映画

ここまでおよそ3000文字!書きすぎ!そして待たせたね、サメ映画の時間だよ!!

観た映画は2本、「Jurrasic Shark(ジュラシック・シャーク – 2012)」と「Sharkenstein(フランケンジョーズ – 2016)」。エンドロールなどをカットすると、およそ1時間程度です。

音楽のまとめは次の通り。
○ジュラシック・シャーク
・オーケストラを中心に不穏な曲、パーカッションも使うけど音がめちゃくちゃ奥にある感じ
・曲としてはしっかりしてると思う、ただし少し古い雰囲気(オケだけを使いすぎだから?)
・転調もない同じフレーズを短い期間に繰り返しすぎて変化に欠ける
・会話シーンの後半に音楽が入る感じ
・シンセパルス、ストリングスのスタッカートで刻んだ時は最近の音楽感が出た

○フランケンジョーズ
・4小節程度の曲がループする感じのものが多い
・使う音源、曲の雰囲気(オーケストラなのかバンドなのか)が統一されていないからか、妙につぎはぎ感がある
→フランケンシュタインだから?
・シンセの音作りが80〜90年代風、SE的な感じ、フランジャー、リバーブとかのエフェクタも関係してる
・ミキシングの手法も古い?楽器の距離感がめちゃくちゃ、低音が足りない感
・後半から銃を構えたシーン、シーンの切り替わりとかで、SE的にオーケストラ音源が入るようになった

ジュラシック・シャークは割と(曲は)悪くなくて、でもシネマティック系のオケ音源だけ使って曲書いたらこんな感じだよねっていうものが多かったです。前の自分の作品思い出してちょっと胃が痛くなった。

書いてある通り、目新しさはない。っていうか環境音とかさっぱり無いから、音楽をペーストしただけ感、強い。

フランケンジョーズはもうめちゃくちゃ。コンポーザが二人体制らしいんだけど、曲の雰囲気も使う音源も統一されていないせいで世界観がぐだぐだでした。曲調もいつの時代だよこれ!っていうものが多い。しかも、なぜか映画の後半から効果音的な短い曲、ジングルみたいのが入る。

こう見ると、やっぱり音楽の作り方、作編曲しかりミキシングしかりは流行りがあって、それをキチンと抑えておかないと古臭い、ダサいっていう風に聞こえてしまうんだなーって。とりあえず、もう観たくない。


最近の映画音楽・総まとめ

とりあえず3本+サメ2本まとめると以下です。

・生楽器+シンセ。シンセは単純なフレーズ、音作りでも十分効果がある(オリジナルの音になる)
・主張の強いメロディは作らない。1〜2分音符など長いメロはおk
・ミキシングに注意。センターは奥に、左右はやや近めに、リバーブは自然に
・曲はループさせすぎないよう、展開を作る。ただし、展開のしすぎに注意

「アンダースコアの考え方をしっかりと持ち、自分で音を作ったシンセを使ってオリジナルの音を出す」ということが、大まとめかな。作編曲覚えた、オケ音源使ったってだけじゃダメで、音作りからしてオリジナルじゃないと「なんか聞いたことある音だな?」になります。課題ですね。

最後の1行は、以上のことを踏まえて作った曲を聞いてもらったときのフィードバックです。曲はストーリー、心情などを物語るものなので、コード進行などが大きく変化すると、ストーリーも大きく展開したように、あるいは別の物語が平行しているように感じられてしまう。しっかりと1つのシーンを語る。なので場合にもよるけど、曲の展開は控えめに。

難しいですね、映画音楽。主張を控えて、かつ効果的な音楽。もっと色んな映画を観て、サントラを聞いて、音作りから展開の仕方から色々学ぶ必要がありそうです。

最後に。今回、学んだことを踏まえて曲を作りました。

ミックスの面でストリングスが細いよ!って言われた。むむむ・・・