ハンス・ジマーのMasterClassを受講してみた・3

ハンス・ジマーのMasterClassを受講してみた・3

今回の受講記でこの話は終わりにします。まだ13回目受けたくらいなので半分以上残ってはいますが、都度書いてますが、あんまりネタバレするようなことを書いてもなぁ…と思ったので。

第三回は7~10回目の授業内容をおさらいします。授業としては4回分になります。

主な内容は「音色パレットを作ろう」「シンセで音作りをしてみよう」「コンポーザの役割について」「映像に合った音楽を作る」です。


7回目から10回目の授業をおさらい

授業の内容は先ほどの通り、「音色パレットを作ろう」「シンセで音作りをしてみよう」「コンポーザの役割について」「映像に合った音楽を作る」になります。これが各1回分の授業となってます。順に書きます。

音色パレットを作ろう

音色パレットとは、その音楽を作る為のプリセットのことでおk。バンドならギター2本、デジタルシンセ、ベース、ドラム…みたいな。

そういった音色パレットを、これから作る物語に合ったものをセッティングしましょうというお話でした。いつも同じではなく。

例ではシャーロック・ホームズの楽曲について話してました。

「ホームズはバイオリンを弾く」という設定は有名ですが、そこに加え、実際にロンドンに行った時の経験を混ぜて音色パレットを設定したそうです。ロンドンではバンジョー、アコーディオン、どこからか聞こえるへったくそなピアノ…など、とにかく色々聴こえたそうで。そういった所から、音楽で世界を構築するそうです。

シンセで音作りをしてみよう

シンセは本当に色々な音が作れるので、ぜひ取り入れよう的なことを言ってた気がする。言ってなかったかもしれない。

必ずプリセットは「使わず」、読み込んですぐのサイン波から自分の欲しい音を作ろうとのことでした。頭の中にある欲しい音を再現するために、プリセットは使わないとのこと。難しいな、おい。

特に、抽象的な音を都度作ることを勧めていました。特徴的な音が混ざると、やっぱり耳に残りますよね。

ちなみに、インターステラのテーマ曲出だしの風の音、あれはシンセだそうです。

また、ハンスがメインで使っていたシンセは「Zebra2」でした。
https://www.u-he.com/cms/zebra

コンポーザの役割について

これはちょっと難しい話で、コンポーザは劇伴に関する決定権を持っている的な話でした。どこに音楽が必要で、どこに音楽は不要で、などを決める、など。

また、コンポーザは制作に関わる全ての人の不安を”fix”する役割を持つ、とも言っていました。役者や監督や映像制作に関わる全ての人の不安をfix、つまり「この画で完璧だ!」とする役割。他にも多分”fix”には色んな意味を含んでいるのかと思います。

そのfixの方法として、音楽をつけたり、いや音楽なしの方が良いだろうということを、コンポーザが判断しようという話。

“Know also when to avoid Mickey Mousing”は本人が言ったもので、常に音楽があるディズニー映画みたいな状態は避けろ、とのこと。あれはミュージカルだから音楽がずっとあるんだと。

こんな時は音楽が要らない、こんな時は音楽が必要と、切り分けしましょう。それをコンポーザが主体となってやりましょう、というのが主な内容でした。こればっかしは制作体制に依存しそう。

映像に合った音楽を作る

何を今更…と言われそうな。これは、その映画、映像にあった音楽を作りましょうという話でした。

めっちゃ綺麗でスンバラシイ音楽が出来たとしても、物語に干渉するのであれば、それは捨てろ。だそうです。「ストーリを損なわない」ということを、第一に考える。音楽的なビューティフルは、違う。

また、音楽でストーリを事細かに伝える必要はない。例えば、クリストファー・ノーランのバットマンシリーズでは、特定の人物に焦点を当てて曲を作り、その人物の物語を伝えています。

“The Dark Night”では、皆んなの嫌いな名悪役「ジョーカー」に焦点を当ててるっぽいですね。ジョーカーはどんな人かを音楽で伝えている。

最後に、そういった物語を伝える為の、音楽の環境としては、最高のサウンドシステムを構築しなさいと言ってました。至極当然ですが、様々な環境で作った音楽が再生されるため、です。全ては金っすね。ううう…


Hans Zimmer’s MasterClassまとめ

第1回は導入として、第2回と今回を読んでいただいて分かったと思いますが、ハンスのマスタークラスは「映画の為の音楽の作り方」を教える講座であって、作曲技法しのごのっていうものでありませんでした。

なので、最近音楽の”Cinematic”ってどういう事なんだろう?と頭の中をぐるぐるしてます。実に音楽的で迫力のあるサウンドがシネマティックなのか、ハンスの言う「映画のストーリを語るため音楽」こそが本当のシネマティックなんじゃないか、とか。

ハンスは「バットマンシリーズのテーマは”two notes”」「キャラクターの心情を伝える為に”One note(1音しか鳴らさない)”にこだわった」とか言うからもう、凄い。

じゃあ今度、ジェームス・ニュートン・ハワード(友達だよってハンス言ってた)とかジョン・ウィリアムズとかの映画音楽が絡んでくると、まーた頭の中がぐるぐるします。音楽単体でも楽しめるし、映像と合わせるとより迫力がある。あれはあれで良いじゃない?

まだまだ面白い話、為になる話が盛りだくさんです。映像にテンポがあった音楽を作るには、逆に映像のテンポを無視するとどうなるか、キャラクターのテーマの作り方などなど…。

まさしく「映画音楽」を学ぶための講座でした。映画音楽家に興味がある方はぜひ受けて欲しい授業です。学べることは多いし、色々と考えさせられます。