映画音楽の作曲の練習”Re-scoring”を何度か行っての感想

映像に音楽を付ける練習を行えるコミュニティに所属して、3度の制作経験を積みました。まだ積むっていう量でもないんですが。

私の楽曲についてのフィードバック、また他の方の作った音楽を聞いて色々と思うことがあるので、今回はそのまとめです。

思ったことはまとめると「ハーモニーの学習が大事」「自分の世界観を持ち、描く」という2点です。


Re-scoring

先に英語を一つ紹介。

映画、映像に合わせた音楽を作ることを"Film scoring"と言います。Scoringが楽譜に書いていくことを指すっぽく、それを映画に合わせて行うからFilm scoringなのかな。"Movie score"でも良いっぽい。

それから、既存の音楽を取り払って自分で音楽を付け直すのは"Re-scoring"。Scoringに「再度」という言葉にあたる"Re"が付くんですね。Rescoreとも言うっぽいです。

今回の記事は本番ではなく練習、かつ既に出回っている映像をお借りして行っているので、Re-scoringになります。

もちろん映像の著作権は全て制作会社などにあるので、下手にRescoreした映像を商売に使うと犯罪です。扱いは慎重に。

Re-scoringを3度やってみて思ったことなど

英語の勉強をしたところで、本題です。記事の始めに書きましたが、「ハーモニーの学習が大事」「自分の世界観を持ち、描く」の2つを強く思いました。1つずつ書きます。

ハーモニー(和音)の学習が大事

私自身がオスティナート、あるいはゼクエンツの乱用…というか、そういった1つのフレーズを繰り返すという技法が好きだっていうのが弱点だからというのもあるんですが、和音を大事にするっていうことを強く思い知りました。

映画音楽と通常の音楽の違いっていくつかあるんですが、特に前者の面白い点は、一見聞くとなんら意味のない不愉快な音楽…っていうと失礼かもしれませんが、映像には時に「現代音楽」的なアプローチも合う、という点です。例えば次の動画。

「2001年宇宙の旅」から、月面にあったモノリスと人間が出会うシーンです。ここでは現代音楽家"Ligeti"の曲が使われています。他の部分でもLigetiの曲が出て来ますが、とにかくシーンの不気味さが最高に際立ちます。

ぶっちゃけLigetiみたいな曲をロイヤリティフリーのBGMで出そうもんなら、無料なら100ダウンロード行くかなーくらい。販売ならおそらく誰も手を出さないんじゃないかな、と。ドライブのお供になんて車で流したら大ブーイングです。

でも現代音楽的なアプローチは、映像でなら俄然、効果的。実際に魔法使い同士のバトルシーンで、そういった現代音楽的なアプローチをされた方がいました。カオスな音楽がまた凄く映像に良く合ってました。

現代音楽とは全然違うんですが、James Newton Hawordが面白い進行を作っています。下記動画は私が去年、気合い入れて耳コピした彼の曲。

イントロのハープが綺麗なフワッとした部分。同じ根音から始まる和音のメジャー、マイナーを行き来する、という進行になってます。FΔ9-Fm7-FΔ9-Fm7…みたいな感じだったはず。通常のダイアトニック、モードにはないけど、全然"アリ"な音の動きです。凄いよね。

この他、John Williamsはリディアンスケールを巧みに使い、CΔ#4-DΔ…みたいな進行を使うとか。

もちろん各音楽家の得意とするスケール、進行、構築の仕方、etcありますが、フツーの3,4和音じゃ全然太刀打ちできないなって感じています。というか雰囲気を作れない、シーンを彩れない。私の活動名はイロドリなのに。

なので、これからは現代音楽的な響きやアプローチ、少し変わった和音進行・思考、スケールを使った進行などなど、よりグッと深くハーモニーについて勉強が必要だなーと感じました。ほぼ研究者だね。

自分の世界観を持ち、描く

これは「ハンス・ジマーのMasterClassを受講してみた・2」でも書いているんですが、自分の世界観を持つということは本当に大切です。

Rescoringの2回目はちょうどクリスマスということで、それにちなんだ動画の音楽を付けました。私はその動画はとっても愛らしく、子供っぽい印象、ホームアローンみたいにしよう!と感じました。

実際に楽曲を付けた動画は下記URLから見れますが、拡散、シェアは絶対にしないでください。

動画の著作権等はもちろん動画制作サイドにあり、尊重してお借りしています。
https://youtu.be/FwbYx7Rcdfw

こちらの動画に先ほどのイメージで楽曲を付けました。クリスマスが待ち遠しく、急かす気持ちを、弾むようなメロディで表現しています。

ところがこの動画をティム・バートンの映画のような雰囲気に変えた、つまりダニー・エルフマンみたいな音楽を付けた方がいます。

ホラーなんだけどコミカルな雰囲気。相変わらず変な格好、メイクをしたジョニー・デップが作り笑いで出て来て、クリスマスに人間の頭の形をしたやたらカラフルなケーキを出して来そうです。基本的になんかきもちわるいよね、ティムの映画。好きだけど。

どっちが良いか?っていうのは結局、監督によるんですけども、つける音楽が変わると全く違うストーリが見えて来ます。私のは少年の可愛さを私なりに推しています。ダニー・エルフマンみたいな彼は、これから起こるクリスマスがとびきりヘンテコな日になる気がして来ます。

映像自体がやっぱり可愛い感じがあるので合わないと思いますが、Ligetiみたいなおどろおどろしい音楽ならどうでしょう?実はみんな気が狂ってて…みたいなバックストーリが見えて来そうです。

だからこそハンス・ジマーの教えにある、自分の描きたい・伝えたいストーリを明確にし、それを音楽で表現する必要があるんです。音楽が変わると、映像のストーリはまるっきり変わる。自分の世界観を、持つ。表現する。

自分は映像に流されちゃって、この辺も弱いなって感じました。なーんかこう、弱い。

映像と音楽の同期は必要

やや蛇足の話。

まるっきり映像との同期をしなかった、Sync pointを設けなかったScoringがあったのですが、これはなんか、映像の迫力が欠けて見えました。

適当な映像流しながら音楽聞いてる感じ、って言い方が凄くしっくり来るんですが…まるで両者が無関係のような、音楽が映像をスルーしているような感じ。付けてって言われたから音楽つけたよ、みたいな。

また逆に映像とがっちり同期させる、ミッキーマウシング。これは上手に使えば凄く雰囲気が出ますが、やりすぎると映像は、端的に言って、死にます。音楽の主張が強すぎて、役者の演技とか映像の本来持つ雰囲気がさっぱり頭に入ってこない。


映画音楽作りは、映画作りそのもの

音楽を作るっていうのは、まぁ雰囲気出てりゃ大丈夫よーくらいで考えていたんですが、音楽が映像の意味をグッと変えることを強く知りました。

また、学ぶべき技法や表現のための発想力はとにかく拡充、拡大していかなきゃいけない。その上で、自分の世界観をしっかり持って、この映像はこう見えてほしい!こう感じてほしい!というのをしっかり表現できるようにならなきゃいけない。自分の主張を持たなきゃいけない。

まだ3回目です。ほぼ毎週、練習する機会があるので、また何か感じたり気づいたら記事にします。ではでは。

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Posted by ilodolly