歌の上手い人、下手な人の違いってなんだろうか。
数年前の話になるんですが、レコーディングスタジオで働いてました。
んで、大変ありがたいことに定期的にガチプロの歌手に当たります。さらに大変ありがたい(んだけど疲れる)ことに、3〜6時間たっぷりと歌っていくんです。あとで編集する時に録り直さないよう、なるべく量録っておきたいって言って。
さすがに長いことじっくり聴かされるもんですから、プロの巧さってものがどこにあるのか、なんとなーく分かってきたので、その話です。
歌の上手い人と下手な人の違い
「その人が好きかどうか」「その人の声が好きかどうか」という、そりゃお前さんそれ言ったらおしめーよぅ的な話は最後にするとして、私の思う一番の違いは「間の取り方」です。3つに分けると大体以下の通りです。
- リズム感がある
- 呼吸すらも歌
- 経験値の量
上から順に紹介します。
リズム感がある
これはもう、純日本人にとって永遠の課題になると思うんですが、とにかくリズム感がいいということがプロ・アマの違い。
さらに上手い人ってのは単にメトロノーム通りに歌っているか、ということではなく、タイム感って言ったらいいのかな?「間」の取り方が絶妙です。歌詞と歌詞の間、音符と音符の間。
おそらく、この「タイム感」の部分が「歌う」ことそのものを表すんじゃないかな、と思います。音符通りにドンピシャに発声するのではなく、前後に意図的に揺らす、ブレさせる。そのブレが歌の雰囲気だったり歌詞だったりと絶妙に絡まって、初めて「歌」になるのかなぁと。
それから、ダラダラとは歌わない。ダラダラってのは音を繋げすぎてる、アタック感がない歌い方ね。
上手い人はここの音はこれくらい伸ばす、切るというメリハリが本当によくついているし、アタック感も大事にしているからバラードでもだらけずノリがいい。そういったリズム感も絶妙です。
ちなみに、本気で「ああこいつはやべぇわ…」って全身鳥肌もんの歌を聴いた時、頭によぎったのは「ケニー・Gのサックス」でした。
ケニー・Gは親父が好きで、小さい頃からこの音を聴いてたので物凄く耳に残ってる。当時は嫌いだった(そればっかり聴かされたから)。
バッキングに対しバッチリのテンポというより少しふわっとリズムとっていて、それがまた曲の雰囲気を作っています(私にはそう聞こえる)。ふわっとしながらもアタックを強くするところや余韻の切り方残し方が絶妙。レコーディング中、この感じを思い出しました。上手い人は意図的にブレさせるし、ダラダラと歌わない。
呼吸すらも歌
これは簡単に言うと「ブレスのタイミングの話」になるんですが、先ほどのリズム感の話に出てきた「間」「絶妙な揺れ」も関連してきます。単にここで吸ってーとかじゃなくて。
上手い人は吸うタイミングも綺麗で、慌てて吸って次の音に遅れることも早まることもないです。逆に、事前に吸って待ち構えるっていうのも全然やらないです。なので不自然な間がなく、呼吸からして歌のように聞こえます。
あと、わざと精一杯呼吸してちょっと苦しそうに聴かせ歌詞を呼吸で表現する、なんてこともありました。呼吸ひとつ取っても奥が深いんですね。歌は深い。
経験値の量
これはもーーーーーーーーーーどうしようもねーわな…。
私の耳が肥えたのも然り、結局は経験量です。如何に練習してきたか、人前で歌ってきたか、歌を学んできたか。がんばろう…。
究極は好かれているかどうか
ここまで技術の話をしてきてアレなんですが、稀に技術がないのに凄い人がいます。それは声質がチートの人です。本当にごく稀な例で、私は立ち会ったことはないです(録音だけ聴いた)。
聴かされたのは所謂ウィスパー系の人なんですが、リズムも音程もヨレヨレ、肺活量もぐだぐだであっても、如何せんいい声なもんで、聴いた瞬間の衝撃が半端ないです。
嫌いな人は嫌いだろうけども、こんなものは太刀打ちできないのでスルーします。
それから人に好かれているかどうかという点。
これも一つの技術ではあるんですが、好かれている人は出す作品も自然と好かれる傾向にあります。歌だけに言えた話じゃないのですが、愛想の良い、人懐っこい人ってのは大体出すもの出すもの人が群がってますよね。全く、コミュ障には難しい話だ…。
自己嫌悪で終わるのもなんか辛いんですが、今回の記事については以上です。
もちろん声で音を取れる、そういったコントロールが出来るってのも大事ですが、いい歌は間ですよ、間。