ケルトの音楽を分析しました・ブリテン諸島方面、歌物とインスト曲の分析とまとめ
実際のケルト音楽ってのは大変幅が広いので、主に今のイギリスらへん(アイルランド、スコットランド含む)の民謡を分析しました。
大変人気が高く、私なんかよりもっと熱心に分析していらっしゃる方が多いので、ぜひ探してみてください。
後半でインスト曲“Irish Music Session"にもちょろっと触れますが、こちらは私の中でまだ研究が進んでないので軽く触れる程度にしてます。
ざっくりとしたまとめ
これだけ押さえておけば、イギリス系の民謡はバッチリです。たぶん。
- 基本が A1-A2-B-A2 の構成
- アウフタクトで始まる曲が多い
- 1拍目から数えて タータタララ というリズムが多い
- 歌詞は大体暗い。別れとか死んだとかすーぐ言う
1つ目はメロディ構成の話。Aメロが2パターン、全然違うBメロ、Aメロ、という形で終わることが多い。
特にAメロはちょっと抑えめなアップダウン、Bメロはグッと高い位置にメロディが上がってから下る…みたいな流れが多いですね。
2つ目もあるあるパターン。英語文法の都合やもともとの言葉のリズムからこうなったのでは?とか思ってます。
3つ目は付点4分と8分または8分スウィングと、裏拍8分と8分2つ…みたいなアレ。これは楽譜見てもらった方が分かりやすいかもしれない。
4つ目はまぁ、うん。
ここからは実例を見つつ分析、またよく使われる楽器やインスト曲についてもカンタンに触れていきます。
曲例1・Greensleeves
こちらはイングランド民謡。なんとなく聞いたことがあるかも?
想ってる人が自殺か蒸発かで残されちゃった人の歌で、緑袖は娼婦のことを指すと言われてるとかなんとか。
今ではエオリアンが一般的ですが、伝統的な音階だとドリアンが正しいらしい。上の楽譜はエオリアンです。
メロディが4小節1組になっていて、4分8分、付点8分と16分8分といった「タータタララ」のリズムになってますね。
ただアウフタクト含めて見て「タ ター」の連続、の方が分かりやすいかも。
音の動きは A:上り下り下り B:高いところから下り下り
曲例2・Danny boy
アイルランド民謡。
去ってしまったダニーへの置き手紙的な歌。私のお墓の前で泣かないでください。って歌ってる。いやまじで。
メロディは2小節1組。こちらも休符挟みつつも4分8分、8分いっぱいという「タータタララ(ラ)」というリズム。「タ」がゲシュタルト崩壊してきた。
音の動きは A:ちょい上り下り B:高いところに上り下り さらに高いところに上り下り
曲例3・Parting glass
アイルランド(スコットランド)の歌。
さようなら友よ!別れの酒を注いでくれ!それ飲んだら旅に出るわ、ガハハ!はよいけ。
大まかな構成、音の動きはDanny boyと非常に近い。
今回調べた民謡の中で一番好きな曲です。
曲例4・Scarborough Fair
イギリスの歌。これも結構有名だと思う。
スカーバラの市に行くのかい?そしたらそこに住むとある女/男によろしく頼むよ。かつての恋人なんだ。
パセリ、セージ、ローズマリーにタイムとか色々条件満たせばワンチャンあるで。
っていう内容。アイテム収集する系のクエストだね。
5小節1組とちょっとクセのあるメロディ構成。
音の動きは A:上り一気に下り ガッツリ上り下り B:高いところから下り
この曲だけスウェーデンとか北欧系にすごく似てる気がする。小節の区切り方とか、メロディの神秘さ、薄暗さとか。
インスト系のケルト音楽
歌物ではないジャカジャカうるさいインスト曲、セッションミュージックにもちょっと触れてみましょう。
Irish sessionまたはTavern musicと調べるとよく出るのですが、どちらも居酒屋で演奏される曲というものです。パブかパーティ会場か、いずれにせよ酒の場が多いみたい。
要は酒飲んでゴキゲンになったヤツらが楽しむための音楽(と解釈してる)なので、動画のような騒がしいもの(1:40~)になったんでしょうね。
メロディの流れ、曲構成は歌とよく似てますが、リズムがこっちの方が俄然早い。
8分16分16分、付点8分16分、3連符…みたいな細かい音符が多いですね。
細かいとはいえ頭拍をしっかり取ってるので、ごちゃごちゃしてるけど踊れるリズムに聞こえますね。
酒の場だから「テンションが上がるもの」として早い、せわしないものになったのかなーとか思ってます。
ちなみにチャンチャカチャンチャカ系のリズム、海挟んで東はノルウェー、スウェーデンの方でも軽く調べた感じ多いっぽいです。
曲の雰囲気こそ違いますが、ロシアの方のポルカ(ズンチャッズンチャッというリズム)も忙しないし酒飲んで踊るし、寒い地方はパリピが多いんですねきっと。
ケルト音楽でよく使われる楽器
最後に、よく使われる楽器を紹介します。
当然細かく見ていくと地方で異なってきますが、おおむね以下の通りです。※紹介している商品は例であって特にオススメというわけではないです。
ティンホイッスル
ケルトといえばこの楽器、みたいなところあるんじゃないんでしょうか?縦笛ですね。
グレースノートとかモルデントとかが付く独特の奏法が、まさしくって感じがしますよね。
値段お手頃で割とカンタンに音が出るので、楽器初心者にオススメみたいです。
フィドル(バイオリン)
こちらもケルトといえば感、ありますよね。
フィドルは英語圏でのバイオリンの呼び方ですが、こういう民族音楽で登場するバイオリンを指すのが一般的っぽいです。
アコースティックギター
バッキングでほぼ確実に使われているのが、アコギですね。
サイズはドレッドノートで明るめの音色系が合いそうだなーと個人的には思います。
コンサーティーナ類
蛇腹楽器も主旋律担当としてよく登場する気がします。
ただし蛇腹楽器の登場は19世紀ごろと比較的最近なので、古い時代を意識する場合は使わない方がそれっぽいかもしれない。
DTMでやるならEthno worldを持っておくと完結するはず
上記で紹介した楽器意外にもバウロン、ボーンとかの打楽器、バグパイプなんかも登場することがある。
DTMでケルト系やりたいなーと思うと個々で揃えてくのはまー大変なので、Ethno辺りを買うのがオススメです。
他にもUVIが似たようなのを出してたり、探してくとたくさん見つかりますが、たぶん定番のプラグインはEthnoなのかなーと。
“ケルト風"が作れるようになるだけでも面白いジャンル
おそらくゲーム、特にRPGが好きな人のほとんどはケルト系が好きだろうし、ゆるキャン民は絶対好きだし、今まで気にしてなかった人もこの記事で興味持って好きになったと思います。みんな好きでしょ?ケルト。
あまりにざっくりした話でガチの人に殴られそうですが、音の流れと曲構成、リズム、インストなら主要な楽器を押さえておけば、それっぽいものが作れます。
いやコレを極めるんだ!という方はぜひ、ケルト民族を深く調べてみてください。