「演奏家のための和声分析と演奏解釈-ドビュッシー-」読みました。

前回の依頼でしこたま自分の技量不足を感じたため、何か軽く、新しいことを頭に叩き込みたいなとAmazonで理論書を漁りました。中々、そこらへんの本屋にはないですから、こういう時には非常にありがたいです。

その中で見つけたのが、今回のアイキャッチになっている本、A・ドメル・ディエニー著「演奏家のための和声分析と演奏解釈-ドビュッシー-」です。

本書は印象主義音楽家として有名なクロード・ドビュッシーの曲を、
・和声など音楽理論的な面
・音の配置にどの様な意味を込めているかという面

といった2つの視点から分析している本になります。

ではでは、どんなものかをさらっと紹介します。


解説している曲は5つ

おそらく最も有名な「海」「月の光」は解説しておらず、以下の5曲を解説しています。
・版画第3曲「雨の庭」
・前奏曲集第1巻「アナカプリの丘」
・前奏曲集第1巻「沈める寺」
・前奏曲集第2巻「ヒース」
・前奏曲集第2巻「カノープ」

これらの曲を譜例交え、解説しています。

理論的な解説

具体的な解説内容として、この曲にはこういうモチーフが用いられ、○小節目のここはこういった和音(展開系を示す数字表記付き)となり、ここでは2度の重なりが続き…といった具合に細かく解説しています。

ただこの本の総ページ数が100頁も満たないくらい薄いので、1曲びっしり楽譜が載っているわけでなく要所要所の解説です。逆に言えば、電車移動中とかにも持ち込んで軽く読めます。

ちらっと書いた通り、和音の数字表記であったり「刺繍音」とか非和声音のことだったりをさらっと書いているので、和声法を少しでも学ばないとてんで読めない内容でした。数字表記については本書の始めで一応解説しているので、学んでいなくてもとりあえずは大丈夫です。

あと、日本語の音表記っていったらいいのか、嬰ホ音とかニ短調とかっていう書き方をしているので、そこらへんも慣れてないと読みづらいです。ちなみに私は慣れてない。

表現の解説

理論的な部分に触れつつも、この曲のこの部分はどんな情景を表現しているのかーという部分も解説しています。

例えば、

32ページ「雨の庭」解説より

“新たに何が起こったのだろうか?7つの嬰記号をもった輝かしい調,嬰ハ長がホ短調の雨をはるか遠くへ追い払ったのだ。雨のしずくは間遠になり,もはやシンコペーションで落ちてくるだけである。ひと筋の太陽の光が庭を乾かし始め,雲には大きな裂け目ができる。"

大体、どの曲もこういう感じの詩的な解説文を合間合間、譜例と共に挟んでいます。

いい点・悪い点

上記に述べた通り、理論的な面でも表現的な面でも細かく解説していますので、結構勉強になります。単なる理論書だとどうしても先ほどの詩的なものはなく、淡々としています。

もちろん理論書っていうくらいなんでそういうものなんですが、この本はもっと音楽に大切なものを教えてくれます。これがいい点。

悪い点は…なんだろうなぁ、これ…。

訳した人の癖なのか、なんなのか。「クサいルビ」がひたすら出現します。


“芸術家(アルティスト)"は淡々と"書く(エクリール)"ことなかれ

「序文」15ページ

“「生きている(ヴィヴァント)」(お気に入りの形容詞をあてはめるなら)理論家であるドメル夫人は,あまりにも多くの音楽家たちが忘れがちなことをけっして忘れない。"

😄❓

これは、本書の序文の、ほんの一部である。

著者の日本人に向けたメッセージ、目次と来てのこの序文。なんだこれは。そしてこれはまだまだ続き、

「序論」18ページ

“とりわけ私の注意を惹いたのは,ひとつの芸術(アール)を芸術家(アルティスト)として推敲することの必要性である"

「雨の庭」30ページ

“調的な異郷感覚(デペイズマン)は,第52〜56小節において完璧なものとなる。"

「沈める寺」52ページ

“これ程までに音楽が半透明で,楽節も形成せず,外面的な表示(マニフェスタシオン)に欠けていることは稀であるが,それは表現(エクスプレシオン)がないということを意味しはしない。"

そうです。この本は「音楽的な教養をドビュッシーから学ぼう」というコンセプトではなかったのです。

−−−身に付くのは、厨二病的な文章力

これを伝えるべくこの記事を書きました。

全く、なんで中途半端に日本語とフランス語を混ぜるんだこの訳者は。音楽理論、音による情景の表現、そして厨二病を進行させる文章表現。同時に3つも学べるじゃないか。なんてお得な。

このルビが無いときはジョジョのセリフみたいな強調点がトントントン…と。一々濃ゆくて読みづらいったらありゃしない。


芸術家のための書籍

アルティストの〜って読んじゃった人はもう諦めましょう。ようこそ新しい音楽思考(パンセ・ミュジカル)の世界へ−−−。

変なルビと強調点はともかく、譜例を交えた理論的な面と、それがどういう表現となっているかと、ドビュッシーの音楽についてしっかりと学ぶことができます。印象主義音楽が単なる印象ではなく、実はアイデアと構築美から成っているんだな、ということがよく分かります。

ちなみにこちらの書籍、なんとシリーズものだったみたいです。

なんてこった、ショパンやフォーレ、バッハもあるだなんて全巻欲しいぞ…他は一体どんなルビが…。

ドビュッシーに興味ある人もそうでもない人も厨二でない人も、見つけ次第、ぜひ読んでみてください。音楽家として大切な"芸術思考(パンセ・アルト)"を身につけられるかと思います。

それでは皆さん、ボン・クラージュ(がんばって)。

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Posted by ilodolly