ブルガリアの音楽を分析しました・第1回(楽曲分析とまとめ)

ブルガリアの音楽を分析しました・第1回(楽曲分析とまとめ)

めっちゃキレイなブルガリアンボイスに惹かれ、ブルガリアの音楽を自分なりに研究してみました。

とはいえ、探れば探るほど不明点がどんどん出てくるので…今回はとりあえず分かった点だけをつらつら書きます。

もう既に、これは長い闘いになるぞと予期してます…いつ終わるんだ…。


めっちゃざっくりとしたまとめ

ブルガリアの音楽について、ものっすごく簡単にまとめると以下の通りです。

  1. 「話しかけるような歌」が主流で、音の大きな跳躍がない
  2. すごく細かい音のしゃくり、「ヒー」という高い声がたびたび入る
  3. メインメロディが5~6音階の場合が多い
  4. アウフタクト始まりはほぼない
  5. ほとんどの楽曲が奇数拍子
  6. ルートをペダルすることが多く、その都合で長2度が発生することがよくある
  7. 終わる和音はドミナント、またはトップノートをルートに7♭を下に重ねた感じで、解決感が薄い

まとめたのにこんだけ要素がある時点でもうなんか嫌だ!!!!!

上記のルールをなんとなく頭に入れつつ、実際の曲を聞くと理解しやすいかな、と思います。

ただ、あくまで私が調べたのは声だけの曲なので、ここに楽器が入ってくるとどうなるかがあんまり進んでないです。

ここからは実際の曲例3つと、歴史的な背景をちょっと紹介します。

曲例1・Sadi moma bela loza

楽器よくわかんないと書いておきながらいきなり楽器スタートなんですが、まぁギリギリ許容範囲でしょ。

この楽曲の楽譜はこんな感じ。

ブドウ畑の歌?歌詞の内容的にそんな感じです。畑仕事中に歌うのかな?

7/8、一応ドミナント始まり、メロディが2-2-1-1区切り、頭と終わりが同じメロ。

ドミナントで終わっていて、まとめに書いた通りでアウフタクトではないです。

6,7thの音がメロディに使われていない。

曲例2・Malka moma

この曲が最高にキレイだから聞いて欲しい。とは思いつつも、ブルガリアの特徴がやや薄いんですよねこの曲。

神様頼むよ、鳩の目とか鷹の翼とかおいらにくれよって女が言ってるよ。男を探すために欲しいみたいだよ、みたいな内容です。いや自分でどうにかしろや。

※クワイアのコードがうまく拾えてないのであまり参考にならないかも、です。

珍しく4/4の曲、Eマイナー。

8小節1組のメロディ、一応4-2-2小節区切りでコード進行が変わるような感じになってる。

これもやっぱりアウフタクトがない。

2nd,6thの音がメロディに使われていない。

曲例3・Kaval sviri

今回紹介する中でもっともブルガリア!!!って感じる曲。

一番研究しがいがあります。

Kavalっていうブルガリアの笛がどこからか聞こえるよ、吹いてる人に惚れちゃったわーっていう歌。男をスペックで見るタイプの女ですね。

Eマイナー、3/4で7*4小節、9/8で8*2小節。

3/4拍子部分では一応アウフタクト始まりなんだけど、7小節1組のループという感じ、終わり2音でTitiと発声する特徴的なオクターブ近いアップダウンがある。

9/8拍子部分では4小節区切り、8小節のメロ、リズムはほぼ一定なんだけど後半4小節でハモリが伸び伸びになる。急にどうした?

長2度のハモリで終わる。

♭2ndが途中登場する、6thの音がメロディに登場しない。

歴史的な話。難しい拍子になった理由はたぶんコレ

とりあえず3曲ほど紹介しました。もう1曲分析したんですが、特徴はあるけど曲が長いので割愛。

ブルガリアという国、元は東ローマ帝国の領地で「ブルガール人」なる遊牧民族が独立を認められ、国家となりました。

後にめちゃ強民族の国「モンゴル帝国」にやられちゃうんですが、さらに上を行った「オスマン帝国」がモンゴルを追い返し、支配下に置かれる。

そこからだいぶ時間が経って、世界大戦中にロシアの管理下に入ったり旧ソ連の衛星国家になったり、内陸国あるあるな感じの振り回され方をされたみたいです。

ここで重要なのが、オスマン帝国も遊牧民から始まった国で485年ほど支配していた、という点。

トルコらへんから始まった(実は曖昧らしい)オスマン帝国の曲を調べると、奇数拍子の曲がめちゃくちゃ多い。

オスマンの音階は中東らしいメロディックマイナーに♭2が入ったもので、よくしゃくりが入る。※音階について細かくいうとちょっと違うみたいです。

この、拍子と音の並びの影響がブルガリアの音楽にめちゃくちゃ影響を与えてるみたいです。

またこれはあくまで推測ですが、ブルガリアの歌曲でちょいちょい挟まる「ヒー」という高い声。

あれは遊牧やら農業やらの最中、遠くにいる仲間との合図に使ってた音がそんな感じで、それがそのまま歌に入ってきたのかと思います。

もう1つ難しい拍子になっている要因は、ブルガリアの言語のリズムにあるかな、と思います。

英語だとTheとかWhenとか、文章の始まりにくる単語ってあまり強調して言わないことが多い気がします。

IとかHeとかは別だけど、英語圏、たとえばケルトがアウフタクト始まり、裏拍に音が入ってくるのはこの辺が由来なのかなーと思ってます。

対してブルガリアではアクセントこそ頭だったり二つ目だったりするものの、1音目からハッキリ言います。

ど頭からリズムが始まる文章構成、という点がアウフタクト始まりが少ない要因なのかなー?なんてことを思いました。

トルコなど中東系は「1つの文字でいくつも音符を拾う歌」が割とあるのに対し、ブルガリアでは全然ないので、この辺りは土地オリジナルなんでしょうかと、そういう点がまだまだ曖昧です。

DTMでブルガリアンボイスを使えるプラグイン2つ

2つほどオススメを知っているので、記載しておきます。

1.BEST SERVICE – VOICES & CHOIRS


※画像クリックでサウンドハウスの商品ページにジャンプします
民族系の音源を探してると大体出会うかなーと思います、BSのクワイア音源です。

ブルガリアンはもちろん、世界中の民族系のクワイアが入っているので、とりあえず持っていれば今後制作に困らないっていう音源ですね。

2.Strezov Sampling – RHODOPE2

https://www.strezov-sampling.com/products/view/rhodope2.html

ブルガリアンボイスのみの音源です。

Strezov sampling自体、クワイアに大変定評があり、私も使ってますがとにかく音が良い…。

ちょっとお値段するのでアレですが、本場ブルガリアを真似る時や神秘的なクワイアが欲しいときにバッチリはまります。


また発見があれば続きを書きます

4曲分析した程度では全然遠く感じるので、また曲を分析することにします…楽譜があんまりインターネットに転がってないせいで苦労するんすよ…。

ケルト系とは違った面白さをぜひ、体験してみて下さい。って締めるとそれっぽいですかね?