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EQ Curve Analyzerでよく使うプラグインの周波数特性を調べた(UAD、PluginAlliance、Soundtoysなど)

よく「挿すだけで音が変わるプラグインエフェクター」というものがあるが、実際どこがどんなふうに変わっているかを視覚化したことはありませんでした。
その視覚化をしてくれるプラグインが、Bertom AudioのEQ Curve Analyzerです。
https://bertomaudio.com/eq-curve-analyzer.html

視覚化できるのはプラグインの周波数特性の部分です。
平たく言うと「挿した時にかかるEQカーブを見る」というものですね。
任意の金額を振り込む形式をとっているので一応は無料でもらえますが、非常に便利なプラグインなので$1くらいは払っても良いと思います。もちろんもっとドンと払っても。

今回はこのアナライザーを使って、私がよく使っているプラグインの周波数特性を見てみました。


確認したプラグイン

今回、周波数特性を確認したプラグインは以下の通りです。

  • UAD – Studer A800
  • UAD – Oxide Tape
  • UAD – Pultec EQP-1A
  • UAD – Fairchild 670
  • UAD – 1176 Rev A
  • UAD – Galaxy Tape
  • Soundtoys – Decapitator
  • xfer – OTT
  • Plugin Alliance – bx_focusrite
  • Plugin Alliance – AMEK Mastering Compressor
  • Plugin Alliance – SPL Mastering Equaliser
  • Softube – Weiss MM-1

上記がよく使うプラグインかつ「挿しただけでなんとなく変化がある」プラグインです。
また上記の他にも、だいぶ見にくいんですがリバーブも数点チェックしました。

  • Soundtoys – Little Plate
  • EastWest – Space II
  • NI – RAUM
  • Valhalla Room
  • Liquidsonics – Reveberate

これらを視覚化していきます。

念のための確認・デジタルエフェクタだと周波数特性はどうなるか

EQ Curve Analyzerを先程のエフェクタに刺す前に、挿しても音に変化のないはずのデジタルエフェクタを通すとどうなるか、先に見てみます。
チェックに使ったのはKirchhoff EQです。

画像左がエフェクタ、右がEQ Curve Analyzerの結果です。
何かしらの周波数特性を持っていると、右のアナライザーに表示されます。
デジタルエフェクターは見ての通り、何も変化がないことがわかります。

では実際に、変化があるプラグインの周波数特性を見ていきます。

UAD – Studer A800

A800はテープシミュレーターです。
説明書によると、各トラックの一番最初に挿すと良い、とのこと。
デフォルトの設定では20Hzをピークに、ローが+3dBされます。
ハイの方にも変化があり、5kHz辺りが-1dB、10kHz以降はちょっと持ち上がるけども全体的にはマイナス、になります。

各トラックに使うのが普通なので、気をつけて使わないとローがモリモリになってしまいます。

UAD – Oxide Tape

こちらもテープシミュレーターです。
使い所としてはA800と同じです。

ローとハイがかなり持ち上がっています。凄まじい音の変化ですね。
A800は内部EQがあるので調整ができますが、Oxideはないので別で調整が必要です。
これもうまく使わないと全体的にドンシャリサウンドになりそうです。

UAD – Pultec EQP-1A

Pultec EQはデフォルトだと全体的に+2dB、ハイがやや落ち気味になります。
1.5kHzあたりの謎のピークは、エフェクタ上段のハイミッドの調整”PEAK”の値に由来してるようです。

PEAKを4kHzに動かすとちっちゃいピークも動きました。ツマミを回すだけで若干のブーストになる設計だったんですね。
同時に、何もしてない200Hzもちょっと持ち上がりました。なんなの。

UAD – Fairchild 670

とても好きなコンプレッサーです。
デフォルトだと全体的に+6~7dBになり、大体200Hz以下と10kHz以上が落ち気味になります。
流石に音量上がりすぎなので、プリセットを作って調整しておきたいですね。

UAD – 1176 Rev A

コンプレッサーです。
音量が+2dBされる以外、大きな変化はないようです。
20Hz以下が気持ち下がるくらい?

UAD – Galaxy Tape

ローランドのヴィンテージが元だろう、テープエコーです。
ブラックフライデー期間に無料でもらえたのでもらいました。
周波数特性を見たいので、ディレイの機能だけOFFにしています(エフェクタ左下のINPUT SENDをMUTEにしている)。

200Hz以下、2kHz以上が結構削れています。
エコー機能を使わなくてもガッツリ削れるので、音を丸くしたくない場合はセンド・リターンで使うのが良さそうですね。

Soundtoys – Decapitator

サチュレーターです。
別記事↓でも触れましたが、挿すだけでそこそこ歪むので扱いには注意が必要です。
プラグインエフェクター(チャンネルストリップ、サチュレーター、テープシミュレーター、コンプレッサー、EQ)の歪み方まとめ

エフェクタ下部のSTYLEで周波数特性や歪み方がかなり変化します。
STYLE Aの場合は全体的に-2dB、ローが削れ気味、ハイが持ち上がるという形に。

STYLE Nは同じく全体が-2dB程度ですが、ローからローミッドが持ち上がり気味でハイは落ち気味、となります。

なんとなくNが気に入ってたんですが、ハイが落ちることで耳障りな音が弱まってたんですね。

xfer – OTT

バカか?

Plugin Alliance – bx_focusrite

チャンネルストリップです。計測の都合でコンプとゲートはオフにしています。
ローとハイが適度に落ちるようです。
カーブが若干チリチリしてるのは、このエフェクタがノイズをわざと乗せるから、ですね。

ちなみにPlugin Allianceの機能”TMT”は今回の調査で初めて知ったのですが、LRで若干の周波数特性を変えている、という機能でした。
左右で差が出るからステレオ感が生まれる、みたいなことが狙いでしょうか。
アナライザーに表示されるカーブの線が2本あるのは、TMTによるものです。

このTMTをOFFにしたい場合は、PAのエフェクタに搭載されている”Stereo Mode”をAnalog→Digitalに変えればOKです。
Focusriteの場合はエフェクタ右部のフェーダー上にあります。

Plugin Alliance – AMEK Mastering Compressor

マスタリングコンプレッサーです。
TMTによる左右差がある以外、変化はないみたいです。

マスタリング用なので強い変化があると困りますからね。これは素晴らしい。

Plugin Alliance – SPL Mastering Equah3ser

マスタリングイコライザーです。
10kHz以降のハイが若干落ちています。お前・・・!!

あんまり気にならない程度のハイ落ちですが、このイコライザーはShelfを持っていないので、ハイ落ちはこれ単機だと調整しづらいです。

Softube – Weiss MM-1

マスタリングリミッターです。
WEISSシリーズは全体的に動作が重い、挿すだけで遅延が発生するという文句はありますが、それを凌ぐ使いやすさがあるのでお気に入りです。軽くなってくれ。

若干の音量増加はありますが、イコライジングはされないみたいです。

ただ、styleを”loud”にするとローミッド以降が+1dBされるみたいです。
wideなども周波数特性は変化なしですが、もしかするとステレオの広がり方など別のパラメータ変化があるかもしれません。

Soundtoys – Little Plate

リバーブです。
残響を作る関係でアナライザーがすんごいことになってますが、周波数特性を見てみましょう。

Little Plateはミッドが持ち上がってロー、ハイはかなり落ちるようです。
ローのみハイパスフィルターで調整可能です。

EastWest – Space II

実際のホールをシミュレートする系のリバーブです。
ホールの特性を反映するからなのか、周波数特性が複雑ですね。
デフォルトのホールリバーブだとローとハイはカット気味、200と10kHz辺りが持ち上がってあとは落ち気味みたいです。
特性だけで想像すると、結構キラキラした音ですね。

NI – RAUM

デジタルリバーブです。
デジタルだと概ねフラットな特性になるみたいです。ややハイが落ち気味?

Valhalla Room

デジタルのルームリバーブです。
ヴァルハラはEQがあるので15kHz以降は絶対に落ちますが、それでも結構フラット気味ですね。
2kHz辺り、ハイミッドがやや持ち上がり気味でしょうか。

Liquidsonics – Reveberate

コンボリューションリバーブです。
こちらSpace IIのように、元になった部屋の特性が反映されるはずです。
デフォルトだとローがカット、ハイとミドルがやや落ち気味のドンシャリサウンドって感じです。

個人的には、ミドルはドライのサウンドを出したいのでこの特性は結構使いやすいなーと。


おわり

ということで今回はいろんなエフェクタの周波数特性を見ていきました。
なんとなく音が変わるな、という印象を視覚化できたので、これからはもっと狙った音作りができそうです。
というか無駄な処理を延々としてた可能性が出てきましたね…ローとハイが出過ぎてるから〜たぶんこの辺を削って〜みたいな…。

アナライザーでのチェック、音作りをする上でかなり便利なのでぜひ試してみてください。
https://bertomaudio.com/eq-curve-analyzer.html