チャンネルストリップのEQユニットの挙動確認(Brainworx、Softube、Kit Plugins、SSL)
私がよく使っているチャンネルストリップの、EQユニット部分の挙動を確認してまとめました。
音作りのベースにしてきたのですが感覚的にしか分かってなかったので、せっかくなのでちゃんとグラフで見ておこうと思いまして。
アナログEQをシミュレートしたものなので、予想通りかなり「設定した数値とは違う」動きをしていました。
挙動確認したチャンネルストリップ4つ
今回、EQの挙動を見たチャンネルストリップは以下の4つです。
- Brainworx – bx_Focusrite SC
- Softube – British Class A
- Kit Plugins – BB N105 ver2
- SSL – SSL Channelstrip 2
挙動の確認には以前のブログでも使った”BERTOM – EQ CURVE ANALYZER 2″を使って見ていきます。
本当に便利なプラグインなので、まだ持っていない方はぜひ入手してください。本当に便利。
EQ Curve Analyzerでよく使うプラグインの周波数特性を調べた(UAD、PluginAlliance、Soundtoysなど)
また、挙動を確認した周波数帯域とカーブの種類は
- ハイシェルフ(10kHz以上)
- ミッドバンドパス(1kHz辺り)
- ローシェルフ(180Hz以下)
の3箇所です。
全ての帯域を確認しても正直意味ないだろうということから、大きく3つに分けています。
ただ、チャンネルストリップによっては処理できるミッド、ローの周波数帯域が異なります。
その辺は大雑把に近いところの挙動を確認しています。
また、ぱっと見で分かりやすいように、各帯域で6dBのブーストをしています。
Brainworx – bx_Focusrite SC
https://www.plugin-alliance.com/products/bx_console-focusrite-sc
Plugin Allianceで販売されている、わずか10台しか作られていないというFocusriteのコンソールが元になったチャンネルストリップです。
ロック、ポップ、レゲエ、管弦楽団などのレコーディングで使われた、という記事がありました。
ジャンルとしてはかなり幅広いですね。
https://focusrite.com/articles/sounds-of-the-focusrite-studio-console/
そんなFocusriteのEQユニットの挙動は以下の通りです。
10kHz以降の6dBブースト

10kHzを6dBブーストしたよな…?と改めてやり直したのですが、やはり画像のように3dB届かない程度のブーストに落ち着きました。
12dBブーストしてようやく+6dBでした。かなり控えめですね。
ミッドのブーストは+6dBで4dBほどのブーストになりました。
ハイほどではないけど、やっぱり控えめですね。
ちなみにQ値はデフォルトの1.3ですが、デジタルの0.7くらいゆる〜いカーブです。
160Hz以下のブースト

160Hzを境に、そこ以下を+6dB、それ以前をゆるーくブーストしています。
大体1kHzをスタートにブーストするので、ローシェルフで上げようとするとローミッドもかなり持ち上がりますね。
また、2kHz辺りが若干削れるというのも覚えておきたいです。
bx_FocusriteのEQを使う時は、シェルフ、バンドパス共にかなり広範囲に持ち上がることに注意ですね。
Softube – British Class A
https://www.softube.com/plug-ins/mixing/channel-strips/british-class-a
60~70年代で人気だったコンソールを再現した、というチャンネルストリップです。
レッチリ、クイーン、ニルヴァーナなどの超有名なアーティストのレコーディングに使われたコンソールだそうです。
となるとNeveのコンソールが元なのかな…?
このチャンネルストリップ、気をつけたいのが「EQをオフにしててもEQが掛かる」という点。
見ての通りです。

ドライブもOFFにして完全に通しただけ、という状態なはずなのですが20Hz以下がゆるく減衰し、ハイミッド辺りがやや削れています。
サチュレーションも結構入ってくるので、完全なフラットじゃない、というのは気をつけたいところです。
10kHz以降の6dBブースト

10kHzをブーストしたんですが、8kHz以上をブースト、となっています。
また1kHz以下がグッと削れます。
なんとも癖の強いEQだこと…。
1.6kHzのブースト

1.6kHzをピークに+5dBされてますね。
かなーりゆるい山なりにブーストされ、かつハイ・ローが減衰しています。
さっきから君、癖つよすぎない?
110Hz以下のブースト

80Hzをピークに大きくブーストされましたが、+4~5dBといったところでしょうか。
また800Hz辺りが-3dB近くも削れています。
ミッドを削れば自ずとロー、ハイが目立ちますが、ここまでやるか…?ってくらい動きますね。
このチャンネルストリップのEQは見ての通り、1ヶ所動かすと他の帯域にも大きく影響が出るので、「どれかひとつを動かして、残りは補助的に」というのが良さそうです。
じゃないと、ブーストと同時に目立たせるためのリダクションも行う、という本来の良さを損ないそうです。
Kit Plugins – BB N105 ver2
https://kitplugins.com/products/kit-bb-n105
BB N105は”Black Bird Studio”のNeve 8078をシミュレートしたチャンネルストリップです。
1970年代に少数作られたコンソールをシミュレートしたもので、10Hzから96kHzまでサンプリングできるという強みがあります。
10kHz以降の6dBブースト

私は+6dBをお願いしました。
が、BBは+8dBしました。
なぜですか。
また、大体800Hzくらいからブーストが始まること、ローミッド辺りが若干削れることは覚えておいた方がよさそうです。
先ほどのBritish ClassAよりも、さらに大袈裟に音が変わります。
ミッドのブーストはきっちり+6dBしてくれました。
ほどほどにゆるいカーブなので、まあ思った通りのブーストにはなりますね。
ちなみにhiQをONにしたら、カーブが小さくなるのではなく、この山が小さくなって+4dBになりました。なんでじゃい。
180Hz以下のブースト

180Hzは確かに+6dBです。180Hzは。
なんで60Hz辺りが+8dBになってるんだ…。
British ClassAもそうなんですが、NEVE系のEQはどうも大袈裟なかかり方をするみたいなので、取り扱いに注意しないとかもしれません。
ローを持ち上げたい、ハイを削りたい、くらい大雑把な目的を持って使用するとハマりそうです。
逆に細かく調整したいときには不向きです。どう見ても。
SSL – SSL Channelstrip 2
https://store.solidstatelogic.com/plug-ins-and-iems/ssl-native-channel-strip-2
Brainworxにもありますが、今回見たのは本家SSLのチャンネルストリップです。
また、私の手元の都合で”SSL 9000K”をシミュレートしたSSL Channelstrip 2を見ます。
SSL9000シリーズは、アナログコンソールでありながら「クリーンな」音を目指したコンソールです。
ヒップホップなどに、という説明がありますが、大編成のオーケストラの収録スタジオにも採用されています。Todd-AO(ここはJを採用)など。
10kHz以降の6dBブースト

10kHzを境にゆるくブーストされます。実数値は+5.5dBくらい?
ハイミッド(1kHz辺り)が少し削れる特性があります。
かなーりゆるく広範囲にブーストしてますが、これは+3dBですね…。足りてないっすよ…。
広くミッドをブーストしますよ〜みたいな感じなんですね。
これもハイシェルフみたいな挙動で、160Hzをブーストしたんですが+4〜5dBかなー程度で、そこ以下も6dB届かず…くらいのブーストになりました。
総じてSSLもNeveのような大雑把カーブではあるんですが、ブーストの実数値は全然足りない、という結果になりました。
ちなみに、このSSLはサチュレーション効果がTrimを上げるまでは全くないので、「挿しただけで音が変わる」が起こりません。
そういう意味では自分の作りたい音にしやすい、と言えるかもしれません。
まとめ
今回調査したチャンネルストリップたちについて、ざっくりまとめると以下の通り。
- Focusrite…ハイが上がりにくく、ローが出やすい
- British ClassA…元から音に色が付き、ハイが出やすく、ミッドが削れる
- BB N105…設定した数値よりも大きくブーストされるので、小さい数値で調整が必要
- SSL ChannelStrip 2…ミッドが出にくい
中でもNeve系のEQはクセが強く、触っていない帯域にもかなり大きな影響を及ぼすので、勝手を知らないと結構苦労します。
ただ、使ってみると思ってるよりもメリハリが付きやすいので、そういう意味では使いやすいです。
反対に、SSLは細かい音作りに適してるのかなーと思います。
結局は使い慣れてきたらコレが良い!みたいになりそうですが、より詳しく中身を知れましたね。



