アマチュアオーケストラに自身の曲を演奏してもらったときに感じたことの覚え書き

アマチュアオーケストラに自身の曲を演奏してもらったときに感じたことの覚え書き

※あくまで素人作家がアマチュアオーケストラに曲を演奏してもらった際の感想です。プロ現場の話ではないですのでご留意ください。

ことの流れは端折りますが、2022年現在、夏のコンサートに向けてとあるアマオケが私の曲を練習中です。
https://twitter.com/ilodolly_/status/1527883436752371713?s=20&t=kHTvgtXBtdf-tq2wxBt7AA

この曲の編成と一部アレンジのやり直した版をやっていただけることになりました。

一介のベッドルームコンポーザーな私にとって大変貴重で、有り難くて、何より初めての経験なもんで色んなことに気付きがありました。特に「打ち込みと生演奏の違い」がデカいです。

その辺りをチラホラ書いておこうと思います。
※執筆現在、まだ合わせ続行中なので都度、追記します。


生演奏してもらった時の感想

書き始めたら色々出てきたので、以下まとめ。

  1. 打ち込み音源よりも生音は倍音も多く音も大きい
  2. 上記からハーモニーを丁寧に組まないと音が濁るorスカスカになる
  3. 弓の動きまで考えて作っておくと演奏がスムーズ
  4. 楽譜は丁寧に書く、ダブルチェックもする
  5. モックアップ(打ち込み)も実際を想定して作り込む

大体こんな感じ。最後については後ほど書いてますが、個人的な意見です。DTMは自由さが良いところなので賛否あると思う。

また、DTMから生オケっていう初めての経験なので慣れてる人からすると「いやいやイロドリくん、そこはちょっと違うよ君」とコメントを頂きそうだが、何もかもが初めてな私にはこう感じました先生!!!っていうのを書いてますので、勘弁してください。

打ち込みとの違いは音量と倍音の豊かさ

生演奏はデジタルデータと違って、おそらく倍音が豊かです。

デジタルデータというのは打ち込み音源ももちろんですが、生演奏の収録した後の音もそう。また倍音がおそらく豊か、というのは別に計測したわけでなく私の体感だからそう書きました。

たとえば今回のストリングスセクションですが、Spitfire AudioのChamber Strings(SCS)くらいの編成人数になんですが、SCSをスピーカーで聴いた時よりも1.5倍くらいの音量で鳴り、倍音成分もすごくたっぷり響きます。体感ね。

なもんで、以下の弊害というか、打ち込みでは感じなかったギャップを覚えました。

  1. バイオリン7本 < ヴィオラ2本 < チェロ1本という音量バランス
  2. オクターブメロディは他楽器の鳴りを計算に入れないとめちゃくちゃバランス悪い
  3. 弓の動きも考えておく

弦楽器の音量は高<低

弦楽器の音量は当然、個々のダイナミクスなどで変わってくるのですが、同時に鳴らすともう全然チェロが強い。※今回はコントラバス不在です。

バイオリン側の壁の隅っこで譜面を見ながらたまにペンを走らせ何やらデキる人風を装いつつ壁と化してましたが、もう全然チェロがハッキリ聞こえる。あいつすげーよ。

ついでに言うとバイオリンよりヴィオラの方が全然聞こえるし、なんなら引き締まった音がカッコいい。バイオリン好きですよ。ディスってないです。落ち着いて。

この、音量は楽器数を超えてくるというのはかなり新鮮でした。

DTMだと音量バランスわりーなーって思ったらフェーダーでいじっちゃうじゃないですか。音量バランス悪いなって感じるのもそういう音源だからかなって思うじゃん。全然知らなかった、個人的に驚いたポイントの1つです。

…バイオリンやる前はチェロやりたかったんですが、やらなくてよかったなとはちょっと思いました(近所迷惑的な意味で)。

各楽器ごとの音量差、それに合わせたダイナミクスの指示はかなり苦労しそうです。実際、フルートは1本なのにすごくデカく感じたし。

メロディをオクターブで鳴らすときはハーモニーをめちゃくちゃ気にしないとダメ

今回の曲はバイオリン1、2でオクターブとかやるんですけど、これ他の楽器で丁寧にハーモニー積まないと悪目立ちするなってのを強く思いました。

先ほど音量バランスの話を書いたのですが、バイオリンよりチェロの方がデカく感じるとはいえ、オクターブで重なるとさすがにバイオリンのメロディがハッキリと聞こえてくる。

そうなると悪くもメロが際立っちゃってハーモニーの部分がスッカスカに感じてしまう。これは本当に良くない。

ので、オクターブで積む場合はメロディのせいで変な空虚感が出ないよう、他の部分を超丁寧に作り込まないとダメだなーと痛感しました。

もちろんストリングスだけでなくフルート、オーボエ、クラリネット、ピアノもいる編成なんで、全部がいる状態のオクターブならまぁ大丈夫なんですけど、それでも変なスカスカ感は否めない。

DTMでもオクターブで重ねたメロディ以外が半端だとメロが悪目立ちするのは確かにそうなんですが、生の方がもっと顕著に感じました。

ちなみにこれは今回の人数だからこそってのもあるんだろうけど、曲の良し悪しはメロディよりも美しいハーモニー・ヴォイシングだなってのは個人的に感じました。縦の音と流れが気持ちよくハマった方が聞いてて気持ちが良い。もちろん両立がベストですが。

弓の動きも考えておく

これについてはめちゃくちゃ強く意識する必要もそこまで無いだろうとは思ってるんですが、弓の押し引きのタイミングも考えておくとよかったかもなーとは思いました。特にスラーと、セクションの縦を揃える音の音。

スラーは弓を折り返しが発生するとどうしてもそこで音がツンのめるので気にするってのはまぁわかりやすいですが、問題はストリングスセクション全体が揃う瞬間について。

ストリングスセクション全体で「この音はダウンから入る」「ここはアップで終わらす」みたいにやり取りしていたんです。となると、全体で動きを揃えるその音までの弓運びももちろん重要になるわけで。

揃え方を決めるってのがコンマスの仕事、各セクションのリーダーの仕事になるかは聞けてないんですが…作編曲を担当したバカが適当にカッコいいからで音を並べちゃったがあまり負担をかけてるというのは反省点です。心の中で何度、土下座したか。

またリズムが複雑(3連符みたいに頭拍で上下が逆になるとか)になると、それも着地点の混乱の原因になるからできれば避けた方がいいなぁってのも思いました。

ここはまぁ、作編曲者に狙いがあるからそういう動きになってるので、申し訳ないが心を鬼にしてやれと言うしかない。ムリダナァ

以上みたいなことがあったので、管楽器の息を吸うタイミングどうこうとも合わせて、弓の動きはある程度考えておくと良いんだろうなと思いました。

楽譜は細かく丁寧に書く

これについては完全に戒めなんですが…譜面はなるべく丁寧に書き込んだ方が良かったな、と。

というのも、特に指示がない部分は「指示がないから」と淡々と演奏されてしまいます。思っている以上に忠実に譜面を再現してきます。

実際に聞かないとわからんなーってことで、詳細な指示は書かずに持ち込んだんです。そしたら現場で話して決めて書いてもらって、あすいません今の話どこからですー?…ってやり取りが発生して、一部ならいいんですがセクションが多くなるとまーーーーーーーーーーー大変…。

なもんで、ちょっとでも「こうしたい」「こう弾いてほしい」ってのがあるなら、それは書いておくべきだなと思いました。要る要らないは結局生音聞きながらになるとは思うんですが、書き足すより消す方が伝達が楽です。

…って思って書いたけど、この辺りは慣れてる人の話を聞きたいですね。

もちろん修正がないようにモックアップ(打ち込み)の時点で作り込んで決め切った方が良いってのは、そうです。はい。反省します。すいませんでした。

楽譜読める人がいるならダブルチェックしてもらった方がいい

近くに読める人がいる、時間的な余裕があるなら、譜面はダブルチェックした方がいいです。ひとりでやっても良いんですけど、できれば違う人がいいかなーと。

今回、個人的に譜面でやっちまったなーって思ったのは「このフォルテってどこまでです?」って聞かれたことなんです。聞かれた部分、実は4小節だけフォルテだったんですがダイナミクスについての記載がなく…完全に私の確認漏れですね…。

また同じフレーズを繰り返してもらうはずなのに書いてある音の長さが違うとか、休符の書き漏れとか、そんなミスもチラホラありました。

っていうのが発生するんで、ダブルチェックはやっておきたいです。パートごとに表示して頭から見直したはずなんですけどねぇ…。

DTMをどうするかは自分次第かなとは思う

ここまで書いていくとじゃあDTMのオーケストラは生鳴り、生演奏を想定した方がリアルだし良いのか?とか思うかもしれないけど、せっかくのDTMだからどっちでもいいかなーと思う。

DTMならではの表現として、Orchestral ToolsのTIMEとかSpitfire AudioのSWARMがすごく分かりやすいかなと思うんだけど、あれ実際にやってもらうとめっっっっっっっっっちゃ大変。

楽器ごとの厄介な音量バランスを気にしなくてもいいってのも、DTMの良さですよね。人数を気にせずにクソデカ編成できるのも、DTMならではですね。

でも現時点の私としては、やっぱり生演奏は想定した方がリアルさがあって良いんじゃないかな、とは思ってます。弓の押し引き、管楽器の呼吸のタイミング、演奏の難易度(弓の動きのとこで書いた話)、楽器の音量バランスなどなど。

私自身がシンプルなサウンドの方が好きってのもありますが、無理のない音の方がやっぱりオーケストラらしいサウンドになると思います。

また、できるだけ生音に近い質感の打ち込み音源を使うのも大事だなと。あんまり安っぽい、うさんくさい音だと余計な音入れちゃうな…ってのは前々から思ってたんですが、生音で聞いたらまだまだ余計な音が多かった。


今日は合わせ初日なのでだいぶテンパってましたけど、大体こんな学びがありました。

ここまでなんか散々苦しんでる様子を書きましたが、楽しいですよ生音になるの。イントロ始まった瞬間にちょっとうるんだもん。

次回の合わせ、本番でまた書き足すことになるでしょう。お楽しみに。


さあさ、2回目の合わせでまた学びがあったので追記ですよ。よってらっしゃい見てらっしゃい。

頭拍でアメリカはジャスト、ヨーロッパはバラバラ

これは現代では果たしてどうなのか?というか、そもそもそういうもんではないのか?などなど思いつつも聞いた話…実際にイギリスの方で学んだ方がおっしゃったので間違いではないと思うんですが。

鍵盤の入るタイミングは他の楽器よりも少し後ろで入る。という話をされた。

曰く、アメリカでは一斉にドン!と鳴らして圧倒する感じで演奏するのに対し、ヨーロッパでは頭拍で楽器が揃って音量がやたらデカくと鳴らないようにしたい、のだそう。キックなどの低音が先、シンバルは後だとか。

今回の編成だとピアノが最も早く音が鳴り、木管、弦という順序に並ぶかなぁという感じです。

実際にピアノがリズムジャストな状態を聞いてみると、頭拍ばかりが音量すごくなるっていうのは分かります。

それから、ピアノのアタックが早いせいで指揮にジャストで合わせると「他楽器と比較して走った」ような印象は受けました。

とはいえ1曲通して全体的にやや後ろというわけでなく、アタックの早さを逆手に「全体を引っ張っていく、突っ込んだリズム」も作れます。

今回の曲は特にリズムの緩急があり、ピアノはパーカッションみたいな立ち位置で入れたので、なるほどこの辺は意識した方が良さそうだなぁと思いました。

※「アインザッツ」のことでは?と詳しい人がこっそり教えてくれましたのでメモしときます。

木管は意外と音量がデカい

フルート1対オーボエ1は割とちょうど良いくらいに感じます。フルートの方が倍音が出るせいか、若干うるさいかなって感じた。

今回はフルート2、オーボエ1、ストリングスはコントラバス抜きで4333編成なのですが、アマチュアオーケストラっていうのも多少あるかと思いますが、木管の方が全然抜けてくる。

4333のストリングスでffでガッツリ刻んでもらっても、オーボエソロのメロはハッキリ抜けてきました。木管って思ってるより音デケェんだな…。

あと人の声と特性が似てて、ハイトーンを吹くときの方が音量がデカくなる。こんな初歩的な特性も私には分からんかったんだなと反省してる。

プロは分からんけど、フルートのハイトーンでmp(メゾピアノ)やp(ピアノ)とかって気持ちの問題であって実際は結構デカく感じるかもしれない。そこは覚えておきたいとこだと思う。

※再三書きますが、あくまでアマオケでの話ですのでプロがやると全然違う印象受けると思います。多分。

低音楽器の人数は要注意

ちょっと番外で、たまたまご近所の吹奏楽バンドがやっててボケっと眺めてたんですが、金管がトランペット3、ホルン3、トロンボーン3、ユーフォ3、チューバ3でした。

…チューバ3!?

エレキベースも居たんで、それはそれはすごい低音でした。ホルンどこー…。

聞いてた場所が悪かったかもですが、トランペットも思ったより抜けなかった感ありました。ので、低音の編成人数は注意ですね。いやほんと。

内声が課題

全体で合わせてみると、DTMではまぁ悪くないだろうと思ってた和音が実アンサンブルだと濁ることがあります。あるいは妙に空虚というか。

特にピアノ、バイオリン2nd、ヴィオラね。よかろうと思って音を割り振ったんですが、思ったような鳴り方してないんですよね…。音量バランスも悪いし。

じゃあどうしたら良いんだろーっていうと、ここにきて生音聞いて印象が変わるなどという事態が起こってしまった楽器の特性を学んだり、和声法をやり直したり…まぁ勉強desuyone.

指揮を担当してくださった先生も美しい曲だよねぇ…とは再三評価してくださった(超嬉しい)ものの、クラリネット・ヴィオラの内声楽器を学ぶことの重要さも再三言ってました。根暗なので何度も言われると深く刺さります。

ちなみに、ピアノやストリングス群で重複している音を1つ抜く、あるいは違う音にするだけでだいぶ整ったな感がありました。たった1音だったんだけどな…なんとも難しい。


続きを書きました。次は7月末、今度はホール。全体の音の鳴り方で何か気づくんだろうなって予感はしてます。

ちなみに、ここまで冷静に書いてるように思ってるかもしれませんが、目の前で自分の曲が演奏されていることに対し喜びよりも先に責任感が重く、合わせの準備から各セクションの困りごとを拾いに行って…という調子だったので、心身共にめちゃくちゃ疲れてます。

何年と磨いてきた演奏技術、プロの指揮を借りてるって思うとねぇ…。