シンセウェーブ系の劇伴に使われているヴィンテージシンセ・プラグインまとめ(ブレードランナー、ストレンジャーシングスとか)


個人的に今、すごく「シンセウェーブ」がアツい。
80年代のシンセをフィーチャーした音楽で、パッと聴いた感じは「ノスタルジー」や「古臭さ」「デジタルなのにアナログ感」といった印象を受ける音楽です。私的にね。
そんなシンセウェーブなんだが、歌物だけじゃなく劇伴にもあるので、今回はシンセウェーブ系の劇伴について調べてまとめました。


シンセウェーブ系の劇伴になってる映画・ドラマ

古い映画だけじゃなく、最近のドラマもシンセウェーブな劇伴が聞けます。
代表的な映画とドラマは以下の通りです。

  • Blade Runner(1982年)
  • Beverly Hills Cop(1984年,2024年)
  • Stranger things(2016年〜)

世代じゃなさすぎて笑う。
一番有名なのだと、ブレードランナーだと思う。如何にもって感じのサウンドが素晴らしいですね。
最新の「2049」はどちらかというとシンセアンビエントなのかな?ってことで除外。

ビバリーヒルズコップは吹き替えの再放送かなんかを親が好きで、なんとなく覚えてます。
メインテーマとかもう、これだよねーって感じがあります。
2024年にネトフリで公開されたバージョンはLorne Balfeが担当してるけど、ちゃんと当時の雰囲気を残してて感動しました。

最後、ストレンジャーシングスはネトフリのドラマシリーズで、これも素晴らしいほどのシンセウェーブやってます。
2016年だと言うのに、ヴィンテージものの実機シンセをガッツリ使っているのでビックリ。機材費だけでいくらかかってるんだろう…?

シンセウェーブ劇伴に使われているシンセたち

先ほど紹介した3作品で使われているシンセ+αを頑張って調べました。
調査した劇伴では、以下のシンセが使われていました。

  1. Linn Drum
  2. YAMAHA CS80
  3. Roland Juno-106
  4. Roland Juno-6
  5. Roland SH-2
  6. Oberheim OB-8
  7. Oberheim SEM
  8. SEQUENTIAL Prophet-5

Rolandつよ…。

Linn Drum


最初に紹介するのは、Beverly Hills Copの劇伴に使われているLinn Drum。旧作も最新も使ってるみたいです。

ちなみに、シンセウェーブ系の曲で聞ける特徴的なドラムサウンドはどうも、Linn Drumが使われている場合が多いらしい。

Rolandの808や909とはなーんか違うんだよなぁと調べていくうちに見つけました。
たどり着いた時は嬉しかった。現代っ子は知らねえよこんなドラムマシン…。
Linn Drumは808のようなアナログではなく、PCM音源のデジタルのドラムマシンだから、808とかとはサウンドの印象が違うってことでした。
Linnの特徴的なスネア、タムがもう、如何にもって感じです。

現在は実機はほとんど出回っておらず、プラグインが中心になります。
たとえばこちら。
https://beaotic.com/products/lmfree

ちなみに実機はコピー品を作りまくってるBehringerが「Lm Drum」という名前で開発中、とのこと。
https://weraveyou.com/2024/06/behringer-tears-of-fears-sounds-lm-drum/

私自身は買うかどうかは未定ですが、楽しみですね。

YAMAHA CS80

作曲家「Vangelis」がBlade Runnerの劇伴で多用したシンセは、YAMAHA CS80というヴィンテージのシンセだそうです。
同じく、Beverly Hills Copにも登場するシンセ。
当時の希望小売価格は128万円。

は?

アナログシンセでありながら8音同時に鳴らせるポリフォニックシンセで、ピッチが若干不安定な2基のVCOが、逆に良い感じのコーラス効果を生んでいたそうです。
高級なシンセだな…と思ってたのですが、大元になっているGX-1というシンセは700万円だったそうです。意味わからん。

中古品はほとんど出回っていませんが、同じCSの名を持つシンセは今もあります。YAMAHA CSというアナログモデリングです。
YAMAHA CS
※画像クリックでサウンドハウスへジャンプします

さすがにCS80とは違うのですが、同じメーカーのシンセで当時のサウンドは再現できそうですね。

ちなみに、YAMAHAの旧CSシリーズをモデリングしたプラグインのシンセを、softubeが出しています。
デモを試した感じ、ほどよい厚みと控えめなフィルターでいい感じのパッドサウンドが作りやすいなぁという印象です。
図太いベースサウンドも作れる汎用性も持ってました。
https://www.softube.com/products/model-77-dual-layer-synth

Roland Juno-106

こちらも、Blade Runnerで使われているシンセ、Roland Juno-106です。
ボリフォニー、デジタル制御する発音部DCO、Junoシリーズならではのコーラスを搭載したシンセです。
これ自体は入門機、単純な音しか作れないという位置付けだったそうで、当時は大した評価はされてなかったそうです。今すごい使われてますよ、開発者様。

Rolandはこちらのリバイバルの実機、プラグインのどちらもリリースしてます。
気になる方はぜひチェックしてください。私は欲しい。

◆実機
Roland Juno-106
※画像クリックでサウンドハウスへジャンプします

◆ブラグイン
Roland Juno-106(ブラグイン)
※画像クリックでサウンドハウスへジャンプします

SoftubeもJUNO-106系をエミュレートしたシンセプラグインを出してるので、こちらもチェックしてみてください。
https://www.softube.com/model-84-polyphonic-synthesizer

Roland Juno-6


2024年のBeverly Hills Copの劇伴で登場するシンセです。
先ほどの106の2年前に発売したモデルで、midiを搭載していないシンセです。
モジュール部分はほとんど106と同じなので、解説等は端折ります。
にしても、なんでわざわざJuno-6の方を採用した…演奏がメインだからどっちでもいいよってことなのかな…w

Roland SH-2

Stranger Thingsのサントラ、ベースサウンドで使われている、モノフォニックのアナログシンセです。
VCO2基とサブオシレーターで実質3VCO!みたいなシンセだそうです…w
サウンドはサブオシレーター付きらしい図太さ、ねちっこさがあります。

実機は中古で割と出回っています。
プラグインはRoland直々に出してました。

ROLAND ( ローランド ) / Roland Cloud Lifetime Keys SH-2
※画像クリックでサウンドハウスへジャンプします

Oberheim OB-8

こちらは2024年のBeverly Hills Copの劇伴で登場するシンセです。
アナログシンセでVCOを2基搭載、8ボイスという代物です。フィルターが柔らかい感じ?
操作系を見てる感じは非常にシンプルなシンセですが、アナログシンセでポリフォニーってのはあんまり類がないので、その辺りで重宝されていたんでしょうか。
今でこそプラグインで作れそうなサウンドですが、フルアナログだからこその音の揺れまでは再現が難しそうです。

現在はOB-8Xという、OBシリーズを統合したバージョンがリリースされています。高いけど、これにしか出せない音は確実にありますね。
OBERHEIM ( オーバーハイム ) / OB-X8
※画像クリックでサウンドハウスへジャンプします

Oberheim SEM

Stranger Thingsのテーマ曲のシーケンスは、オーバーハイムのSEMで作ったそうです。
先ほど紹介したオーバーハイムのモジュール型のシンセで、複数取り付けて強引に8ボイスを作っていたそうです。

Stranger Thingsで使われているSEMはコンポーザーオリジナルのもので、モジュールを2基搭載したものを使っていました。(KORGのSQ-1をくっつけて他のシンセと同期してる?)

実機は見つからなかったのですが、ブラグインでSEMをエミュレートしたものをPlugin Allianceが扱ってました。
オーバーハイムのシンセが欲しいと言う場合は、こちらをチェックしてみてください。
https://www.plugin-alliance.com/en/products/bx_oberhausen.html

SEQUENTIAL Prophet-5

こちらは2024年のBeverly Hills Cop、Stranger Thingsの劇伴で登場するシンセです。
Beverly〜に関して映像でちらっと映ったくらいなのでちゃんとは分からなかったんですが、時代的に5だろうな…という推測です。
Stranger Thingsでは、ピアノっぽい音、パッドなどで使っているそうです。

Prophet-5は名前の通り5音同時に音が出せる、かつ音色を保存できるといった機能を持ったアナログシンセです。
この機能は当時だと本当に凄かったみたい。便利になったんだなぁ、今って。

音としては正直、フツーのシンセって感じがします。飾り気のない、本当にシンセらしい音というか。
逆に、私の思うシンセってのはこれが基準なのかもしれないと考えると、偉大なシンセと言えますね。

現在はRev.4として実機が売られています。
SEQUENTIAL(Dave Smith Instruments) ( シーケンシャル ) / Prophet-5 Rev.4
※画像クリックでサウンドハウスへジャンプします

こちらも、Softubeがプラグインで出しています。実機はちょっと…という場合はこちらをチェックしてみてください。
https://www.softube.com/model-80-five-voice-synthesizer

上記以外

他にも、Blade Runnerならヴォコーダー、Fender Rhodesなどのエレピ。Beverly Hills CopならMiniMoog、モジュラーなどを使っているようです。
モジュラーは多様過ぎるので紹介は端折りますが、やはりMoogの木枠のデカいやつは定番みたいです。リバイバルでも800万円でしたっけ…?

ヴィンテージ機材系はArturiaがプラグインで出してる

上記では本家RolandやSoftubeなどを出しましたが、ぶっちゃけてArturiaがプラグインでヴィンテージコレクションを出してます。
実機は要らないし、個々で買い揃えるのは面倒…といった場合には、こちらがおすすめです。

ARTURIA ( アートリア ) / V COLLECTION X LICENSE ダウンロード納品
※画像クリックでサウンドハウスへジャンプします

余談

ここからは余談というか所管というかほぼ憶測というか、私個人的なことを書いておきます。

わざわざヴィンテージ機材を使う理由

シンセを調査してて思ったこととして、そもそもなんでこんなにヴィンテージ機材にこだわるのか、ということ。
もちろんBlade Runnerの当時はそれ以外の選択肢がないからになりますが、Stranger Thingsとか最近の劇伴なら別にソフトでええやろとは思うんです。

これは恐らくなんですが、

  1. 実機でしか出せない微妙な(本当に些細な)音の揺れや特徴が、音楽で時代背景を色濃く描くのに必要だった
  2. プラグインよりも直感的に操作ができるから
  3. 生演奏と合わせて演奏する必要があったから

といったことかなぁと推測しています。
写真でわざわざフィルムで撮影するみたいなことを、シンセでもやってるのかなーと。
3つ目に関しては2024年版のBeverly Hills Copの劇伴の収録がそうだったから書いてますが、この時にラップトップ+midi keyじゃないのも、1と2が関連してる気がします。

Stranger〜に関しては、劇伴担当がただのシンセフリークな気がしなくもないんですが、サウンドにこだわるからこそヴィンテージ、なのかもしれません。

色んなシンセを扱う理由

モジュラーは明確に、モジュラーでしか作れないユニークなサウンドがあるからというのは分かります。

ただ、登場したヴィンテージシンセは各々得意なことを担当していますが、ぶっちゃけProphet-5あればなんで出来んじゃねーかな、と思ったんです。
あれ一台でベースもパッドもシーケンスも出来るわけだし。(せーので演奏して収録だとそうもいかないけど)

これは映像やサウンドを聴いてて思ったことなので正解じゃないとは思うのですが、各シンセが有名になった由来の音を担当しているな、と思ったんです。
CS80は搭載されているプリセットサウンドや揺れるパッド、SH-2であればねちっこく図太いベースサウンド、など。

もう本当に推測でしかないんですが、そういった「アイコニックなサウンド」というのはそのシンセが登場した当時に「他ではこんな音が出せない!」となったサウンドだと思うんです。
他のシンセで代用したりプラグインで再現したりは出来るけど、そういう音ならやっぱりあのシンセだよね、みたいな感じなのかなーとか考えました。
Blade Runnerのサントラで聴いたパッドが欲しい!→CS80で作ったのか!じゃあ使おう。みたいな。

最早こだわりの域でしかないんですが、その小さな(金額は大きな)こだわりが、良いサントラを作ると思うのでとても大事なことですね。


参考

Gear Rundown: Vangelis, composer of Blade Runner and beyond

,