音圧を上げる方法とは?「0LUFS」を目指してマスタリングをしてみた
単純な興味も込みで「0LUFSまで音圧って上がるんだろうか?」を試しました。
そもそも音圧、LUFSとは何か。上げるにはどうしたら良いか。といったことをこの記事でまとめています。
前提:音圧(LUFS)を上げるには音量を上げるだけではダメ
音圧を上げるとはつまり音量を上げるのだから単純にゲインを上げるか、リミッターでガッツリ潰して持ち上げればいいのでは?というと、実はそう単純ではないです。
というのも単純に音量を上げるだけだと、
- 0dBを越えた音は書き出しする時にカットされる
- 0dBを超えると音はバリバリと割れてしまい音質を損なう(聴きにくい汚い音になる)
- 無理にリミッティングすると、やはり音質を損なうか変なダッキング感が出る(音が引っ込む)
といったことが挙げられます。
※32bit floatで書き出せば0dB以上がカットされることは避けられるが、ほとんどのストリーミングでは16~24bitを採用しているので結局音割れ音源になる。
では「音圧を」上げるにはどうすべきか、といったところで音圧レベルを表す”LUFS”に関することを調べてみて以下のことがわかりました。
- 音圧の高さにはダイナミクスが関係している
- 人の聴覚が感じ取れる音圧は周波数によって異なる(等ラウドネス曲線)
LUFS(ラウドネス)とは
LUFS (Loudness Unit Full Scale) の略で、人の聴覚が感じる音の圧力を数値化したものを指します。
いわゆる「ラウドネス」と呼ばれる数値です。
規格はヨーロッパブロードキャストユニオン(EBU)が定めるEBU R-128で、「絶対値」になります。
R 128では「-23LUFS」を標準とし、相対計測の値「LU」では-23LUFS=0LUとしています。
この0LUで正規化を行い、-26LUFSなら「3LU音量が小さい」となります。
ただ音楽のストリーミングサービスでは各社独自の正規化が行われており、標準値が-11LUFS、-14LUFSなどバラバラになっています。
たとえばYouTubeでは-14LUFSを標準の数値とし、超えた場合にのみ下方調整が入ります。
この調整があるせいで、ばちばちに音圧を上げてもアップロードしたら音量がグッと下がるので、音量が小さくてダイナミクスもなくて…みたいな状態になります。
なので、一般的に「-14LUFSでマスタリングをしましょう」みたいな話が出回るんですね。
ちなみにLUFSはMomentary(瞬間計測)、Integrated(平均計測)、Short term(短期計測)の3種類あり、一般的にLUFSと言われるのはIntegratedの値です。
「LUFS」の数値はどう決定されるか
ではLUFSはどうやって決定しているのでしょうか。
Peakは単に音量の最大値、RMSは音量の平均値を測ったものですが、LUFSは「音圧」です。若干曖昧。
ところがこのLUFSを具体的にどう計算して導いているのかは、私がざっくり調べた感じだと見つかりませんでした。
ので、推測していきます。
まず、ラウドネスが「人の聴覚で感じる音の圧力」であることです。
10代〜20代の聴力で「1000HzのdBを基準に、可聴音域の各帯域で同じ音量に感じるのは何dBか」を実験しまとめていった「等ラウドネス曲線」を見ると、以下の通りです。
※「等ラウドネス曲線」について詳しい画像、解説はググってください。
人が音に大きさを感じる単位をPhonといい、20dB / 1000Hz = 20Phon(音圧の数値)のとき、
- 20Hz:90dBで20Phonに感じる(+70dB)
- 3000~4000Hz:15dBで20Phonに感じる(-5dB)
- 20kHz:35dBで20Phonに感じる(+15dB)
です。
1000Hzを基準に見ると、低音域はめっちゃ音量を大きくしないと大きいと感じない、3k~4kHzは割と大きく感じやすい、10kHz以降はそこそこ大きくしないと感じにくい、という関係があります。
この関係はPhonの数値が大きくなってもさほど変化がないようです。
LUFSは人の聴覚が感じる音圧を数値化したものなので、このラウドネスは絶対に無視できない要素です。名前にも入ってるしね。
また調べていくとLUFSの決定には「ダイナミクスの有無」も関係していることが分かります。
RMSは音量の平均値なのでダイナミクス(音の最大、最小値の差)が大きいとRMS値も小さくなりますが、これがLUFSの値にも関係していると推測できます。
であればLUFS値を高くするには、
- 等ラウドネス曲線に従ったイコライジングをして「帯域ごとの音圧を一定化する」
- ダイナミクスを極力減らしていき「音量の平均値を一定化する」
- 一定化したところでピークが0dBを越えないギリギリまで音量を上げる(0dB以上は切り捨てられちゃうので)
ではないかと考えました。
具体的な音圧アップ方法
先ほど書いた仮定が正しければMIXBUSトラック(もしくはマスタートラック)で、
- 20~200Hz、10k~20kHzをブースト、3k~4kHzはリダクション
- Clipperを使ってダイナミクスをギリギリまで減らす
- コンプレッサーでより細かくダイナミクスを減らす
- リミッターで極限まで音量を上げる
を行えば音圧は最大まで上げられるはずです。
…をやったのがこちらです↓ -0.5LUFSまで行きました。ひどい音ですねしかし。
「音圧は0LUFSになるのか」を実験しました。
実験なのでホワイトノイズ(と寂しいからキック)だけです。方法と結果は動画をご覧ください。 pic.twitter.com/nBlWNGozBZ
— Merry bad ending (@m3rrybadend1ng) July 10, 2026
ただこれはあくまで音圧を最大にするには?を立証するためで音の良し悪しはガン無視なので、実際の制作ではEQの工程は省いて良いし、Clipperもそんなに無茶苦茶なことはしない方がいいです。
コンプやリミッターも自分が聞いて「これくらいが良いな」と感じる程度までかければ良いと思います。
そもそも音圧はどれくらいあればいいか
先ほどは可能な限り音圧を上げましたが、ものすごいドンシャリかつ音割れしてる(ホワイトノイズなのに)と流石に音が悪すぎるのでそこまではやらないとして…。
LUFSの値は確かに各ストリーミングサービスごとに標準が違うので悩むのですが、ざーっと見てると以下の数値まで音圧を上げていけば十分かなと思います。
- CD:-10LUFS
- ストリーミング:-14LUFS
ただ、EDMやロックバンドが-14LUFSだとなんか物足りない感は否めないし、オーケストラが-10LUFSもあったら大事なダイナミクスが損なわれた音になりますよね。
また記事の最初の方で紹介したのですが、ストリーミングサービスごとに音圧の標準値が決まってたり、決まってなかったりします。
iTunesなんかは自分で環境設定しなかったら、音圧はマスタリングそのままだそうです。
であれば。
自分が気持ちいいと感じる音圧まで上げるのが正義なのかな、と思います。
音圧アップの前に再生環境の音量に注意する
そもそもの話になりますが、人の耳は音量が大きい方が良い音だと感じるようになっています。
だからこそ音圧戦争だとかそういうことが起こったわけで。
注意したいのがこの「音量が大きい方が良い」という音響心理の部分です。
もしかすると音の気持ちよさを求めて普段から周りの音が聞こえなくなるほどの大きな音量で、音楽を聴いていませんか?
自分が制作するにしてもリスニングするにしても。
耳に悪いのはもちろん、大音量マジックで音の良し悪しを感じている可能性を一度は睨んだ方が良いです。
本当に気持ちがいい音は音圧だけで決まるものではありません。
参考
最後に、この記事を書くにあたって参考にしたサイトのURLを掲載して終わります。
音圧を上げていくことを掘り下げてきましたが、ちょうど良い音圧というのは結局は音楽のジャンル次第、個人次第であることを忘れないようにしましょう。
https://lucentechno.com/column/sound_recorder/1163/
https://benrilab.com/app/loudness-analyzer/
https://wavesjapan.jp/articles/what-is-lufs-why-it-matters-in-mastering-music/
https://download.steinberg.net/downloads_software/WaveLab_Cast_2/help/ja/wavelab/topics/wavelab_concepts/ebu_loudness_recommendation_r128__c.html
https://en.wikipedia.org/wiki/EBU_R_128