映像音楽を作るときの注意点・ミッキーマウシングについて


映像音楽、英語だと”Film scoring”というそうなんですが、最近そのfilm scoringを練習しよう!というコミュニティに参加してます。

まだ1回しか映像音楽やってないんですが、世界中からフィードバックが来て初回にして僕は精神的にボロボロです。作曲し始めの頃、ニコニコ動画で散々叩かれたのをふわっと思い出したな…。あんときの気分とよく似てる。

そんな私の所属するコミュニティでもらったフィードバックから、最近知った言葉「ミッキーマウシング」について書きます。


ミッキーマウシングとは?

これは貰ったフィードバックの中の1つなんですが、”too much Mickey Mousing”というコメントがありました。ミッキーマウス?彼よりはジャック・スケリントンとゼロの方が好きかな。ではなく。

ウォルト・ディズニーが多用する映像音楽の技法って言ったら良いのか、「映像の動きと音楽を同調させる」という技法を、ミッキーマウシングと呼びます。

さっきの映像であれば、雷のピシャーという音と音楽の盛り上がりが同調しています。他にもいろんな箇所でぴったりタイミングが合います。昔のディズニーアニメは特に多く見られる、作曲技法です。

これは狙って行う技法で、かつディズニーの世界を表現する技法です。これを多用すると、視聴者に与える情報量が多くなりすぎて、映画本来の物語をあまり伝えなくなってしまいます。

音楽はシーンの雰囲気、キャラクターの心情を描くべきであって、キャラクターの動きを表現し過ぎちゃうのはよろしくない、と言うことだそうです。コミカルで楽しいんですけどもね。

ミッキーマウシングを避けつつ、映像と合わせる

で、今回私が作ったものはこのミッキーマウシングをし過ぎてしまったみたいで、やり過ぎって言われました。ついでにパーカッション鳴らし過ぎって。それはいつもです、すいません。

映画音楽、特に海外のものって「映像と同調した音楽」っていうイメージが強いですよね。実際に映像を見ながらオーケストラの指揮を取って録音するし。でも、それを意識し過ぎるとミッキーマウシングが起こります。

では避けるにはどうするか?例えばHans Zimmer作曲のThe Dark Knightから、ジョーカーの銀行強盗シーンです。

映像と音楽が同調するポイントを”Sync point”、以降Syncとしますが、1回目のSyncは0:08。ジョーカーの後ろ姿が映るシーンに切り替わった瞬間です。シンセのゼクエンツが静かに始まって、車が止まる瞬間で音量がグッと上がります。

以降もSyncが何回かありますが、1:22辺りから高音でスーッと音が入って、1:26のシーンが変わる瞬間にフット消えます。ゼクエンツの頭も一致するので、ここもSyncです。最も大きく重要なSyncは4:30、ジョーカーがマスクを脱いだ瞬間です。ドーンと来ますね。

大体見ていくと、シーンの切り替え、ジョーカーの動きで重要なポイントでSyncが行われていきます。決して銃を撃つシーン、金庫の中に入って金を詰めるシーンにはSyncしません。

つまり、この5分の中で重要な点、シーンの切り替わり、特に今作最も重要な人物であるジョーカーにスポットを当てて音楽を構築しています。要点を抑えてSyncすることで、ミッキーマウシングを避けつつ、映像の時間と合う音楽を作れます。

ついでなのでもう一つ、パシフィックリムのラストバトルシーンです。

始めの方のメインテーマは映像に挿しただけ感がありますが、1:02辺りのサイレント、音楽がなくなる箇所がSyncです。音が消えた瞬間に焦った声が入るので、「今、何が…?」感が強まりますね。ちょっと飛ばして1:22、着地がSyncです。2:00のボスが鳴く前にサイレント、というのも狙ってますね。たぶん。

どこでSyncしてどう見せるか?どこでサイレントにするか?というのも、大切な技術になってきます。もちろん、これもコミュニティでツッコミ入れられました。難しいんだもーん…。

逆に映像のテンポをガン無視で音楽を当てると…?先ほどのパシリムの最初の方みたいな感じなんですが、上から乗せた感が半端なく、なんだか映像に締まりが無くなります。メインテーマであれば、入れるタイミングさえ合えばカッコいいんですが…難しいですね。


映像音楽は作曲とはまた別の練習と勉強が必要

まとめると、映像のテンポに合った音楽を作るという技術は、通常の作曲とはまた別の技術が必要である、ということです。特に、映像にきっちりと同調した音楽、ミッキーマウシングは、視聴者に情報を与え過ぎてしまうので避けなければなりません。

コミュニティではほぼ毎週、映像が配られるんで、今後のメインの活動はそのコミュ内になりそうです。勉強したこと踏まえてあれこれ考えてやってみるとまぁ1週間はえーよ。