【MIX学び直し】ミキシングにおける「サチュレーション」とは?どんな効果があるのか、使い所はどこか
MIX学び直しとして1本目の記事投稿です。今回は「サチュレーション」について。
細かな原理とかはもっと詳しく解説している記事があるのでここでは省略し、肝心なところのみを書きます。
より詳しく知りたい!という方向けに、最後の見出しで私が参考にした記事、動画のリンクを置いておきます。
サチュレーションとは?いつ使うものか
そもそもサチュレーションとは何かというと、「原音を損なわない程度に歪ませるエフェクター」のことです。
このエフェクターを挿すと、原音に対する倍音がどーんと出て、音に鋭さや暖かさが付与されます。
EQによるブーストとは違って倍音のみを足すので、より自然に音の厚みや音抜けを得られます。
ちなみにサチュレーションを日本語にすると「飽和」となり医学や画像の分野にも登場します。
が、ここでは上記のようにエフェクターそのものを指すこととします。


上の画像は、440Hzのサイン波にサチュレーションをかけた例です。
440Hzのみを出していますが、サチュレーションによって倍音が出てきています。
サチュレーションエフェクターを調べると山ほど出てきますが、概ね以下の3つに分類できます。
- Odd Saturator(奇数倍がブーストされるサチュ)
- Even Saturator(偶数倍がブーストされるサチュ)
- Transistor Saturator(奇数、偶数共にブーストされるサチュ)
エフェクターそのものはテープ、チューブ、トランジスタの3種類ですが、より詳しく中身を知りたいので上記の奇数・偶数・トランジスタに分類しました。
それぞれについて簡単に解説します。
Odd Saturator(奇数倍がブーストされるサチュ)
参考にした記事が英語なのでこれをなんと訳したらいいか悩んだので、一旦「奇数サチュ」としましょうか。
この奇数サチュは「原音の奇数倍の倍音を増やす」サチュレーションです。

画像例では原音の440Hz(ラ)に対して3倍の1320Hz、5倍の2200Hz辺りと、奇数倍音が出ています。
1320Hzは大体ミ、2200Hzは大体ド#なので、根音・属音(5度)・M3rdが出てきていますね。
奇数倍の音が増えると、音は一般的には「鋭く」「濁る」ようになります。
和声法を知ってるとピンとくるかと思いますが、3rdの音は基本的には重複を避けたい音です。倍音の都合で濁りますので。
その3rdがオクターブ上ではあるものの出てくるので、奇数サチュを過度に使うと全体的にあまり良くない方向に濁ってしまうので注意が必要です。
逆に、鋭さや濁りをワザと付けることで音の塊感を強めたい、圧を持たせたいときには有効そうです。
Even Saturator(偶数倍がブーストされるサチュ)
奇数サチュに対して、偶数倍音がブーストされるサチュもあります。一旦、偶数サチュとします。

原音440Hzに対し、2倍、4倍、6倍…と偶数倍音が出てきています。
偶数倍は単純に「オクターブ」なので、奇数のような濁りは発生しにくいです(鳴らしている楽器や和音による)。
このように偶数倍音がハッキリすると、音に「暖かさ」「厚み」を感じるようになります。
特に大事なのは2倍音のようで、2倍音が出るようになると音に暖かみが出る、と言われています。実際そう感じました。
これは名機と謳われるアナログエフェクター系プラグインでも発生するサチュレーション効果です。
Transistor Saturator(奇数、偶数共にブーストされるサチュ)
最後に、奇数も偶数もどちらも満遍なく出てくるサチュレーションがあります。
これはトランジスタ系のサチュの特徴なので、そのままトランジスタと呼ぶこととします。
テープやチューブ系のサチュレーターも「2倍音+奇数音」とか「どちらかというと奇数の方が大きいけど偶数倍音も出る」という挙動です(機種による)。
ただ一旦の分類として、この記事ではトランジスタとさせてください。

トランジスタでは画像のように、2倍も3倍も出てきます。倍音をとにかく出すものですね。
倍音がとにかく出るので、音の厚みも鋭さも付与されます。
ベースのように低い音域が主な楽器なんかは埋もれがちなので、トランジスタのようにガッツリ倍音を出せるサチュで持ち上げると存在感が出そうですね。
じゃあトランジスタが一番いいんじゃないか?となりますが、それが次の話につながります。
なるべく避けたい”Intermodulation Distortion”とは
Intermodulation distortionとは直訳すると「相互変調の歪み」ですが、もっと簡単にいうと「本来はなかった音が生成されて濁る」ということです。
アンプのIntermodulation Distortionの調査にならって、いずれも倍音を含まない60Hzと7000Hzのサイン波に、偶数サチュをかけたのが以下の画像です。

60Hzの倍音は順調に出ていますが、7000Hz付近では倍音とは関係ないだろうギザギザとした波形が発生しています。
これがIntermodulation Distortionです。
画像では単純なサイン波をポーンと出しているだけですが、実際の音楽ではもっと複雑に色々な音が重なります。
そうなるとこの歪みはもっと聞いて分かりやすくなるはずです。
また奇数サチュでも軽く触れましたが、音が濁るからなるべく避けたい3rdの重複が、倍音を増やした都合で重複気味になってしまうことも考えられます。
トランジスタは特によく歪むので、問題が増えそうですね。
つまり、音の厚みが出るからとりあえずかけまくったサチュレーションのせいで、かえってアンサンブルが濁ったサウンドになったり、意図していない歪み感が付いたりする場合もあります。
「原音を損なわない程度に歪ませる」はずが、原音を損ないかねない歪みになってしまっては逆効果ですよね。
サチュレーションは適度に計画的に
奇数、偶数、トランジスタのそれぞれのメリットを知りつつも意図していない濁りを発生させないためにも、無闇にサチュをかけるのはやめよう。というのが結論です。聞いてるのか俺。
なので、サチュレーションを使うときには以下のことをまず考えた方が良いでしょう。
- 曲全体的にどういうサウンドにしたいか。クリーンかパワフルか
- どの楽器にどんな効果を持つサチュレーションを挿すか
たとえばEDMなどサウンドにパワフルさが求められるジャンルなら、歪みによる濁りがかえってアクセントになる場合もあります。
逆に生楽器のようにクリーンなサウンドが求められる場合には、サチュを使わない方が良い場合もあります。
また実機シミュレート系のプラグインはサチュレーション効果を付与する隠れ効果を持っている場合があるので、その辺りも考えてエフェクターを選ぶのが良いでしょう。
参考にした記事、動画
ということでサチュレーションについての学び直しでした。
もっと経験を積んだり深く信号処理を学ぶとより細かく書けそうですが…まぁそれは追々。
私は全トラックに絶対Studer A-800を挿してましたが、あれ実は状況によってはよくないんだな…と強く反省しました。
無計画にとりあえず挿す、はやめましょう。
この記事を書くにあたって参考にしたものは以下のとおりです。
より詳しく知りたい場合はぜひ見てみてください。
https://www.sageaudio.com/articles/what-is-saturation-for-mixing-and-mastering