【MIX学び直し】EQ(イコライザー)とは何か、使う際の注意点について
MIX学び直しの記事、2本目はイコライザーです。
死ぬほど難しい話になるのですが、なるべく噛み砕いて分かりやすく書いていきます。
が、難しすぎてどこかで間違えたことを書いている可能性もあります。それくらい難しい話です。まじで。
最後に私が参考にした動画等も貼っていますので、ぜひそちらもご覧ください。
結論:厳密に音を管理するならなるべく使わない方が良い
理由についてはこのあとたっっっっっぷり紹介しますが、つまるところ「厳密に音を管理するなら」EQの使用は避けた方が良いです。
簡単に言うと「EQはフィルターという特性上、どうしても意図していない音の変化が起こってしまうから」ですね。
とはいいつつもあれこれ調整するのに便利なエフェクタなので、以下のことに注意すればEQによる意図していない変化を最小限に抑えられます。
- デジタルEQを使う(ミニマムフェイズ、リニアフェイズを適切に使い分けられるとなお良し)
- Q値、スロープ(ハイパス、ローパスのカーブの緩さ)はなるべくゆったりさせる
- EQはカットで使用する
- スネアの表裏でEQを使い分ける、パラレルでEQをかける時には位相ズレに超注意する
- 低音域では上記を特に注意して使用する
4、5はどうしてもザックリだとこの程度しか書けず意味わからん…になりますが、その理由もこの記事でがんばって説明します。
ミニマムフェイズ、リニアフェイズとは
チラッと書いたミニマム、リニアについて説明します。
私がよく使うKirchhoff EQだと上部のロゴ左に切り替えスイッチがあります。

「フェイズ」というのは日本語だと位相にあたります。
そのフェイズがミニマムか、リニアかというのがそのままの言い方なんですが…これだけだと意味わからんと思うので、それぞれの特徴を表にまとめると以下の通り。
| ミニマム | リニア | |
|---|---|---|
| レイテンシー | 0 | あり |
| 位相ズレ | あり | なし |
上記の通りで、ミニマムフェイズEQは位相ズレを最小限に抑える代わりにレイテンシーなくイコライジングできるEQです。
リニアフェイズEQは位相ズレをなくす代わりにレイテンシーが発生するEQです。
ほとんどのEQはミニマムの方に該当し、遅れなく処理できるので便利ではありますが、位相ズレが起こります。多少ね。
ただし、後ほど触れますが位相ズレも場合によっては便利なことがあります。
そもそもEQとは
EQ(イコライザー)とは”Equlize(平準化、同等)”を行うエフェクターです。
- Frequency – 周波数
- Quality Factor – Q値、品質係数
- Gain – 音量調整
基本的なパラメータは上記の3つです。
ローパス、ハイパスフィルターにはGainがなく、Slope(dB/octで表すカットのなだらかさ)の調整があります。
デジタル信号処理の分野で絶対に触れる(絶対かどうかは知らんが私はそうだったぞ)のがデジタルフィルターで、ローパスフィルターの設計なんかもやらされます。いやなおもいでが。
ただそのローパスフィルターが全てで、ローパスでカットした帯域を通すようにすればハイパスになるし、どっちもかければバンドパスフィルターになります。
フィルターの中身、計算式なども一応調べましたが、今回の話からはだいぶ離れるので割愛します。
興味ある方は記事の最後に載せた動画をぜひご覧ください。頭が痛くなります。
EQの特性:リンギングとは
イコライザーの特性のうち、気をつけたい一つ目の特性がリンギングです。

上記の画像は、上からシンセで作った超短いサイン波をそのまま出力したもの、ミニマムフェイズEQをかけたもの、リニアフェイズEQをかけたものとなります。
この画像のうち、大きな山の前後に小さい谷があるかと思います。
あれがリンギングです。リップルとも言います。
大きな山は原音ですが、原音の後ろに発生するリンギングを「ポストリンギング」、それよりも前に発生するものが「プリリンギング」と言います。
ポスト、プリがどんな影響を出すかと言うと、
- ポストリンギング:音が鳴った後にややブーミーな音(音域による)が残る
- プリリンギング:音がなる前からクレッシェンドしてくる感が付く、後ろも何かが残る感が付く
といったことが挙げられます。
原音→EQ処理→処理結果の順なので「ポストリンギング」が通常、発生します。
またそういう順で処理が行われる都合で、処理結果の音はどうしても原音から位相がズレたものになってしまいます。
これがミニマムフェイズEQの特性です。
ただ、デジタルEQの場合はDAW側の補正が効くので、そういった位相ズレを回避できます。
しかし位相がズレない代わりに原音の前にリンギングが発生してしまいます。
こっちがリニアフェイズEQの特性です。
どちらもリンギングは発生しますが、色々比較してみるとミニマムのポストリンギングの方が大きく発生しがちです。
以上がリンギングの説明ですが、ぶっちゃけ耳で聞き取れるかどうかぐらい短い時間で起こるものなので、普通にEQをかけるだけなら気が付かないと思います。
EQを強くかけるとリンギングが大きくなる
ただしリンギングが大きく発生してしまうパターンというのがあります。
それが、
- ローパス、ハイパスのスロープを急角度にした時
- Q値を大きくし鋭いカーブでカット、またはブーストした時
- EQでブーストした時
の3つです。
スロープで確認してみます。
非常にゆるい1st order(6dB/oct)で設定したローパスと、キツめの4th order(48dB/oct)で設定したローパスをミニマムフェイズEQ、カットオフ周波数30Hzでかけます。
こちらは1st order

原音は65Hzなので、本来は影響を受けないはずですが通過すると以下のような変化が確認できます。
比較がしやすいように出力結果をノーマライズしています。

上の波形が4th orderのキツいカーブのローパスですが、比べるとリンギングが強く出ていることが分かります。
対して1st order、ゆるいカーブのローパスはリンギングしてますがあんまり分からん程度です。
ベルフィルターなどでも同じような結果が出ると思いますが、とにかく「キツいカーブのEQをかけるとリンギングが強くなる」というのが大事です。
EQでブースト、リダクションするとリンギングはどうなるか
続いてEQでブーストした場合はどうなるか、です。
同じく65Hzのサイン波に対し、65HzをQ値1.0で+6dBブーストした場合の波形です。
比較がしやすいように出力結果をノーマライズしています。

上から原音、ミニマム、リニアですが、EQかけた音のリンギングが中央の線から上に浮いているのが分かります。
ミニマムの方はそこから下に向かって大きくリンギングしているのが分かります。
かなり原音から大きな変化が起こっているのが分かりますね。
同様の設定で-6dBのリダクションをするとどうなるか。

リンギングこそ発生していますが、ブーストほど大きく揺れていないのが分かります。
今回は65Hzと低い音でのリンギングについて見ました。
低い音なので、プリリンギングではフェードインしてくるような低音が発生し、ポストリンギングでは低音がやや残る。というイメージでしょうか。
短い時間過ぎて聞いても私にはさっぱりですが、いずれにしてもアタック音の前後に本来はなかった音が発生する、というのはなんとなくわかったかと思います。
また今回はチェック用にシンプルな短いサイン波のみを出していますが、実際の楽器のように複雑な倍音を含む場合は、リンギングのせいで意図していない音の強調が発生したりするかと思います。
その強調のせいでアタック感、トランジェントがややボケる、ということが起こります。
正直聞き取るのも困難なくらい短い時間で、ではありますが、それはやはり避けたいですよね。
このことから、EQによるリンギングを抑えたい、意図していない音の発生を防ぎたいのであればEQは使わない。
使うとしてもゆるーいカーブで、カットまたはリダクションが良い、となります。
EQの特性:位相ズレ
こればかりは仕方ないのですが、フィルター処理というのは入力→処理→出力という手順なので「時間的な遅れ」が発生します。
そのため原音と比較すると出力結果はコンマ数秒、数サンプル程度のズレが発生します。
ただし、あらためて整理すると「ミニマムフェイズEQ」では位相ズレが起きて、「リニアフェイズEQ」では位相ズレが起こりません。
単品でEQをかける分には気が付きにくいのですが、たとえばスネアの表裏のうち片方の調整でEQをかけると表裏で位相がズレて、音が打ち消されたり強調されたりしてしまいます。
スネアの表のモコモコ感を取り除きたくてEQかけたのに音が痩せた…なんてことが起こるという意味です。
逆にこれを利用することでスネアの余計な帯域をカットしたり、パラレルでEQをかけることでキックの持つ帯域のうちベースと被る部分だけ消しつつキックの低音をブーストしたり…といったこともできるようです。
この辺の詳しい話は最後に紹介する動画でご確認ください。
もしEQの位相ズレによる不都合が起きたな、という場合はリニアフェイズEQを使った方が良いでしょう。
チェックしたEQ
今回のチェックで使用したEQは、
- kirchhoff EQ
- UA Pultec
- SSL Channel Strip2
の3つです。
ここまで見せてきた波形の処理は全部、kirchhoff EQです。
大体なんでもできるのでオススメです。
Pultec、SSLについては比較用に使いました。次の通り。

こちらは上から原音、ミニマム、リニア、そしてPulteqで6dBブーストした時の比較画像です。
ノーマライズをかけていないのでリンギングがちょっと分かりにくいのですが、PultecとミニマムフェイズEQの結果が似ていることが分かります。

続いてSSL。
ポストリンギングのみ発生していますがどういうことですか…。すっっっっごく控えめです。ほぼ発生していないくらい。
…というのをチェックしてました。SSL、お前優秀だな。
https://www.uaudio.com/products/pultec-passive-eq-collection
https://store.solidstatelogic.com/plug-ins/ssl-native-channel-strip-2
今回の勉強で参考にした動画
長々と書きましたが、以上がEQというものについてです。
厄介なのがリンギングの発生なので、使うならそこを考慮しようねっていう話でした。
ミニマムフェイズとリニアフェイズ、位相ズレを使ったトリックについて
デジタル信号処理について(全9コースです。ぜひ)
