ディズニーランドのパレード曲「ザ・ヴィランズ・ハロウィーン“Into the Frenzy”」を調査、分析しました
11月18日追記・新しい記事書きました!「ディズニーランドのクリスマスのパレード曲「Disney Christmas Stories “Fond Farewell”」を分析しました」
2024年10月1日から始まった、東京ディズニーランドのパレード「ザ・ヴィランズ・ハロウィーン“Into the Frenzy”」の音楽について、私なりに分析していこうと思います。
ディズニーランド、シー共に好きですが、作曲家を調べてみたことはなかったので、今回の調査と分析でかなり色々知れて楽しかったです。
さて今回のパレードですが、映画「プリンセスと魔法のキス」のヴィラン「ドクター・ファシリエ」が主役です。
そのためか全体的にニューオリンズジャズやR&Bっぽさが多く、スウィング感が大変気持ちいいですね。
各ヴィランの曲が挟まったりナイトメアビフォアクリスマスのモチーフがチラッと挟まったりする部分はすぐ分かるかと思うので、それ以外の部分について触れていきます。
ショー待ちの暇な時間のお供になれば幸いです!
今回の参加作曲家
まず、どんな作曲家が参加しているかをSpotifyの記載を基に見ていきます。
https://open.spotify.com/intl-ja/track/24jMnLNth5AZT6s3e8AG74?si=1ffecec343f14bff
記載されている作曲家でヴィランズの登場映画の担当作曲家を除くと、残るのは以下の4名です。
- Adam Gubman
- Sage X Price
- Nathan Padgett
- Tyler Koontz
上から順にどんな人か見ていきましょう。
Adam Gubman
アダム・ガブマンさんはポップスに始まり、ゲームサントラ制作も担当している作曲家です。
Minne’s Funderland、B-A-Y-M-A-Xの制作に参加、他にも色々ディズニー関連に参加しています。
ゲーム関係だと、スマートフォンアプリ「アークナイツ」のサントラにも名前がありました。リリース当初からやってるゲームなので結構びっくりした。
またThe Greatest Showmanの楽曲「This Is Me」のプロデュースも行っていました。
今回のInto the Frenzyのパレードモードの曲も、どこかグレイテストショーマンっぽいなぁと思ったんですが、直感が当たったみたいです。
パレードのテーマ(主旋律のことですね、たぶん)と他の曲のアレンジ(おそらく各ヴィランの曲のアレンジ)を担当したとのこと。
Sage X Price
Hiphop系のアーティストで、Spotifyにいくつか作品がありました。
アダムさん直々にポストしてたのですが、今回は作詞部分を担当したとのこと。
https://x.com/AdamGubman/status/1840962962967969847
Nathan Padgett
ネイサン・パジェットさんはCM、映画音楽などを担当している方です。
ざっと聞いた感じ、専門はオーケストラになるのかな。
ディズニー関連も結構参加していて、Fantasy Springsのメインテーマは彼が制作しています。
また、Donald’s Quacky Duck Cityにも参加しているそうで、名前がありました。
https://www.npmmusic.com/
Tyler Koontz
タイラー・クーンツさんもCM音楽などを担当している方で、パレードやショーの曲を多く手がけている方です。
パジェットさんと一緒にDonald’s Quacky Duck Cityの制作に参加していました。
https://www.tylerkoontzmusic.com/
Into the Frenzyの曲の分析
先に紹介した4人が制作に関わっている今回のパレード曲「Into the Frenzy」について、パレードモード、ショーモードそれぞれ分析していきます。
フロートが動いている状態をパレードモード、フロートを止めてみんなで踊る時をショーモードと書いてますが、もし間違えていたらすみません…。
冒頭に書いたのですが、基本的には「ニューオリンズジャズ」「R&B」「ソウル」みたいなジャンルをベースに作っていったのかなぁと感じました。
パレードモード
すげえどうでも良いんですけど、ジャファー付近にいるダンサーさんの衣装がめっちゃ好みです。かっこいい。
じゃなくて、パレードモードの曲を分析していきます。
該当箇所はサントラの3:11〜20:05です。
https://open.spotify.com/intl-ja/track/24jMnLNth5AZT6s3e8AG74?si=e7858ead841e411c
・メロディ
ヘ短調で間違い無いと思うんですが、ダークなAメロ→壮大なサビ→アレンジ違いのAメロという形になっています。
女性が怪しく歌うAメロですが、「ファ」「ド」「レ♭」「ラ♭」と歌っています。
この「レ♭」が「ファ」から数えて♭6の音なんですが、曲の流れ的に落ち着かない不安定な音であって、それが逆に良い感じのアクセントになってダークさが出ているのかなーと考えています。
ダークなメロディが淡々と繰り返されて、途中解き放たれたようなメロディになります。
女性が高らかに歌い上げるので、陰鬱な雰囲気から解き放たれたのも相まって気持ちがいいですね。
この辺りにグレイテストショーマンを感じるのは気のせい?
・イントロ/間奏部分のアレンジ
3:30付近の始まりはナイトメアビフォアクリスマスのアレンジですね。
そこからセリフと、ニューオリンズジャズにビートを混ぜた、若干エレクトロスウィングっぽい感じのアレンジのBGMが同時に入ってきます。
パレードでダンサンブルにするためにエレクトロスウィングっぽくしているんでしょうが、大部分はニューオリンズジャズの影響かなーと。
ちなみにドクター・ファシリエの登場する「プリンセスと魔法のキス」のサントラは、ほぼニューオリンズジャズです。
舞台や時代設定が20世紀アメリカだから、なんでしょうか。
小刻みで跳ねるリズムが楽しいですね。
・使用楽器(一部)
細かく書いていくと色々あって大変なので、歌が始まった以降のわかりやすい楽器のみ書いていきます。
- シンセ系ドラム(キック、ハイハット、スネア)
- シンセベース
- オルガン(Aメロ)
- クラビネット(サビ)※チェンバロかも
- ガットギター(サビの頭拍に1ストローク入ってくる)
- チューブラベル(サビ)
- ホルン、トランペット、トロンボーン
- ストリングス(サビ後のAメロ繰り返し部分)
細かい打楽器、シンセの効果音なども入ってきますが、おおむね上記が使われています。
他のディズニーハロウィンでもよく聞くんですが、オルガン+チューブラベル+金管+弦という組み合わせは定番って感じがしますね。
あとはホーンテッドマンション内でも鳴っていますが、チェンバロも入っています。もしかしたらクラビネットかもしれないけど。
ちょっと珍しいなぁと思ったのが、ガットギター(もしかしたらリュートかも)のサスティン短いべよ〜んって感じの弦の音が入ること。
音の軽さや短さがちょうど良かったのかなーとは思うんですが、もしかしたらナヴィーン王子(カエル)がそっち系の楽器を演奏するから…とかだったりして。
・途中で入ってくる変な「ヒュオォ」っていう音
ボーカルとかバックトラックとかの音量ガン無視で、クレッシェンドする「ヒュオォ」という音が入ってきます。
リズムやタイミングがだいぶ中途半端に感じるので、何かを示唆しているのかなーと思ってます。
音の感じ的に「吸う」感じというか、もしくは「勢いよく飛び出す」感じというか。
なんでしょうね?
ショーモード
シンセポップな雰囲気で始まったなーと思ったら、ニューオリンズジャズをもっと踊り重視にしたようなアレンジが始まって…とかなりテンション高いスタートですね。
ゲストがダンスする部分は、特定のジャンルというより「ディズニーのショーによくあるポップなダンスチューン」という感じです。
ハウスミュージックのリズムでありながら、ディズニーのミュージカルみたいな歌声の入り乱り方をしたり、金管や弦などがリズミカルに入ってきたり。
この辺のアレンジはドナルドのQuacky〜に参加した作曲家2人のアレンジでしょうか?
調べたらたぶん近いジャンルは見つかると思うのですが、トップチャートのポップスとは違う独自のポップさを感じるあたり、ディズニーポップというか、オリジナル路線を作ってるのかなーと感じます。
・メロディ
全体的にポップな雰囲気を持ちつつも、どこかダークさを感じさせるのはたぶん、こっそり混ぜられてるトライトーンのせいかなぁと分析しています。
上の譜面の2部音符、ナチュラルの「ラ」が鳴っていますが、これがメロディの頭の「ミ♭」に対しての不協和になります。
この、頭拍にトライトーンが出てくることで一気に不安定さが増して、アレンジはポップなのにメロディはダークという「ダークポップ」を作っているんだろうなーと。
解釈が上記で合ってるかは分からないんですが、こういうメロディを外してくるのがまたグッと来ますよね。
楽曲の全体的な話・トレンドには乗っかりつつも独自路線
先ほども書いたのですが、楽曲のアレンジや雰囲気自体はディズニー独自感があるなーと感じています。
特定のジャンルに乗っかっているというより、ディズニーらしいポップス・ダンスミュージックというか。
その上で、古臭さを感じないサウンドに仕上がっている要素として、以下があるのかなと思っています。
- ステレオ感が弱い、全体的に真ん中に寄っている
- 楽器そのものの音を活かす、サウンドの質感やキレの良さ、シンプルな展開
- 耳に刺さる音がほぼない
ここ最近の、2020年〜2023年のトップチャートを聴いていくと上記と同じような特徴を持っていることがわかります。
(あくまでUSA、UK、EUのトップチャートの話。日本はかなり独特なので、除外して話を進めます)
もちろんジャンルによっては全然違うことをやっている楽曲もありますが、特に顕著なのが、
- ハイハットの音量が控えめ、クラッシュシンバルはほぼ使われない
- ベースの音量が控えめ
- シンセサイザーの音作りがシンプル(基本の波形そのままに近いくらいシンプル)
- バックトラックにオブリガートがあんまり登場しない
という部分でしょうか。
2020年というとちょうどコロナ禍で、家で、スマホで音楽を聴くことが増えたから家でのんびり聞いたり、スマホでの聞きやすさを重視したりする傾向になり、上記で紹介したようなアレンジ・ミキシングになったと言われています。
当のInto the Frenzyも色んな音が入り混じりますが、最近の音楽っぽいこざっぱりさがあります。
ただし、ショーモードでは流行りの感じを結構無視したどんちゃん騒ぎになっているので、この辺りが独自路線だなぁと。
それでも最近っぽく耳に障る音はないなーと思います。
ちなみにトップチャートの音楽はHiphopに影響を受けた(あるいはHiphopストリームそのもの)の音楽か、カントリー・ロック辺りが人気です。
対してディズニーのパレード曲はそういうトップチャートに影響されず、表現したい世界観を最優先している感じがあります。
上記の所管はSpooky booからも感じたことなので、あの曲もそのうち分析したいですね。
Into the Frenzyはニューオリンズジャズを聞いておくとより楽しいかも
ということで今回は、2024年のディズニーハロウィーン「ザ・ヴィランズ・ハロウィーン“Into the Frenzy”」の分析でした。
使用楽器やメロディにダークさを入れつつ、アレンジの仕方でポップさを作っているという、ディズニーの技術を感じました。さすがだわ…。
また、ドクター・ファシリエの登場作品になぞってちょくちょくニューオリンズジャズっぽいアレンジが入ってくるので、ショーを見る前にサッと聞いておくとより楽しめるかもしれません。
ディズニーでいうとやはり「プリンセスと魔法のキス」のサントラですが、ディズニーランドのシアターオーリンズ辺りやディズニーシーのブロードウェイ、ウォーターストリート辺りも同じ雰囲気を味わえます。
別の曲も分析したいと思っているので、そのうち書きます。
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