生成AIから自分の音楽作品を守るためにクリエイターがやるべきこと

本来ならクリエイターは守られる存在であるべきなんですが、残念ながら日本の法律を作る側は「イノベーション」という曖昧な目的のために、クリエイターを食い荒らす生成AIの発展に踏み切る形になりました。本当に残念です。
政府が我々を蔑ろにする以上、自分で自分の作品や権利を守る他ありません。
今回はじゃあどうやって守るか、といったことを私なりに考えたのでその話です。
ブログではあんまり自我を出さないように書いてきましたが、今回だけはだいぶ不満気に書いてます。
法律等に関しては、IT法務.com様の以下の記事を参考にさせていただいております。
そもそも生成AIの何が問題か
生成AIは「簡単にものが作れて便利」みたいに捉えられがちですが、クリエイターにとっては以下の点で問題のある技術だと言えます。
- 生成AIには学習データが必須で、そこには既存の著作物が使われている(従来の著作権法だと著作物の利用には許可が必要であるのに関わらず)
- 生成AIに任せれば大量の創作物を瞬時に作れてしまう(物量で競われた場合、絶対的に人間は不利)
- 生成AI利用者が増えるとクリエイターのためのツール開発業者の売り上げが落ちる→クリエイター業界そのものに大きなダメージ
上記のようなことが考えられます。
法律については後ほど触れますが、仕事にしている人にとっては2と3はかなり死活問題です。
たとえば音楽の1曲の制作には大体1週間そこら掛かる(人や内容による)のですが、1週間もあれば生成AIはとんでもない量の音楽を作り出せます。
とんでもない量の中からこれは使える・売れるというものがあったら、生産コストを鑑みると生成AIの方が俄然お得です。何より、誰でも作れますからね。
また、3については趣味で音楽を作っている人にも大きく関わります。
生成AIで音楽を作れば安く早く済む、というのが当たり前になると、当然ながら制作ツールを作っている企業の売り上げは落ちます。音楽業界なんてただでさえピンチなのに、余計。
機材だけでなく、演奏家やエンジニアも当然要らないでしょう。AIがどこからかデータを引っ張ってきてなんとなくで作りますからね。
そうなると音楽業界全体がほぼ死ぬので、趣味で作りたいのに機材が希少すぎて無理という状況にもなりかねません。
これらは大袈裟な話ではなく、本当に起こりうる話です。
現状の生成AIの法律について
著作権法の第30条4によると、簡単に言うと「AI学習のために著作物を利用することは法律上問題ない」とされています。
では、サイト上に公開されている著作物のAI学習のためのダウンロードはどうかというと、
- 利用規約に同意する、しない関わらずダウンロード可能→データの利用方法は自由だと解釈されてしまう可能性がある
- 規約に同意しないとダウンロードできない→AI学習を禁止している場合、利用方法次第では違反となる
といったことが考えられます。
ただしここが大事なんですが、「著作権と利用規約の2つある場合のオーバーライド問題(どっちが優越になるのか)」はあんまり例がないので、どうなるかは分からん。となっているのが現状です。
なので、今のところは「ウェブ上にある著作物は自由にAI学習して良い」となってしまいます。
冗談じゃない。
今のところ生成AIの学習はOKで、その後の生成した著作物については「表現の意図があれば著作物として認められる可能性がある」とされています。
参考:文化庁著作権課「AIと著作権」P58 https://www.bunka.go.jp/seisaku/chosakuken/pdf/93903601_01.pdf
そんなもん口が巧いヤツだったらいくらでも言い逃れできるので、結局のところ学習の段階からして我々クリエイターはどうにかするしかありません。
海外の生成AIに関する対応状況
総務省の資料「AIに関する各国の対応(https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r06/pdf/n1420000.pdf)」によると以下のとおりです。
- EU:ものすごく厳しい法律を設定
- イギリス:EUほどの規制はないものの、政府がどうあるべきかといったガイダンスを出している
- アメリカ:各企業の定める対応に準拠
EUはかなり厳しく、生成AIを使うこと自体がほぼ禁止になっています。
イギリスはEUの規制ほどではなく、透明性を確保するようにといったガイダンスが設定されているようです。
ちなみに私はイギリスのストック販売サイトに「事後報告で」学習用データとして楽曲を勝手に売られたので信用していません。
アメリカの場合は各企業に任せているようです。
たとえばGoogleの運営するYouTubeだと「投稿したコンテンツをAI学習に用いて良いか」といったチェック項目を設けて、個人の意向を尊重する形をとっています。
…とはなっているものの、日本の法律は日本国内で適応されるので、海外から持ち込んで日本のAIに読み込ませて日本で生成して…とやれば、海外の規制から逃れられる可能性があります。
もしそんなAIロンダリングみたいなことになったら海外からはバッシングを受けまくるはずなんですが、AI推進派はどう考えてるんですかね。
どうやって自分の著作物を守れば良いか
私は音楽家なので、自分の音楽をどう守れば良いかという点で見ていきますが、ここまでに書いてきた通りで正直、日本国内で自分の作品を守りきることはほぼ不可能です。
ただそれでも抵抗できる手段はいくつかあります。
- フィンガープリント技術などで著作物の照合が行えるストリーミングサービスでの配信を積極的に行う
- AI学習目的でのダウンロード・購入を禁止している海外のサイトを利用する(特にEU圏は良さそう)
- SNSなどオープンな場で作品を公開する場合はウォーターマークを入れる(自分の声で無断学習禁止〜とか禁止事項を述べた音声を小さめに入れておく、とか)
1つ目はデータを渡しているように見えますが、YouTubeの用に「著作侵害をしているかどうか」を判定できるサービスにアップロードをしておくことで、もし自分の作品そっくりなものが作られアップロードされても守れる可能性が高まります。
2つ目はAI規制が進んでいる国のサービスを使う、といったことです。
ただ先ほどもちらっと書いた通りで、そのサイトからダウンロードし日本に持ち込んで学習されて日本国内で生成されたらあんまり意味がないです。
3つ目は一番やっておきたい処理です。SNSに投稿するものはすべてウォーターマークを重ねる、という。
作った人が誰であるか、といったことを述べた音声を音楽に重ねて2mixを作ってから公開する、というのが良さそうです。
もちろん納品するものやストリーミング配信をするものにウォーターマークは入れないでくださいね。なんじゃこりゃ…?ってなっちゃいます。
これからの音楽クリエイターがやらなければならないこと
2025年1月現在、アメリカも結局は政府直々にAIの開発・発展を推進すると言い始めているAI時代に突入しています。
なので、どんなに生成AIへの対策を講じてもいずれは生成AIがかなり出来の良い音楽を生む日が来るでしょう。
クリエイターは人のために制作することを生業としているのに、なぜそこに無機質で無責任な生成AIを導入するんでしょうか。本当に意味がわからない。
そう思った際、私なりの考えですが、我々音楽家は以下のことに取り組む必要があるかなと考えています。
- AIでは真似しにくい、誰が作ったかがわかるような「シグネチャサウンド」を持つ
- アドリブ力を鍛える、取り入れる
- 変わらず生成AIに対しての異議を唱える
1つ目は正直難しいです。永遠の課題な気がします。
オーケストレーション、音作りなどで「これは彼の作品だろうな」と推測できるような音を取り入れていくことがAIの対策になります。
また何より、その音がハマればリスナーやクライアントから「彼の音楽が聴きたい」「彼に制作を頼みたい」といったことに繋がるでしょう。
2つ目もシグネチャサウンドとほぼ同義でもあるのですが、何より人間味のある演奏をAIは再現しにくいみたいです。そこを突く、といったものです。
アドリブは経験や知識から生まれる人間のものなので、これは大事にすべきです。
3つ目は、クリエイターが生成AIを受け入れたら誰も問題視しなくなってしまうから、です。
ただこれらも正直いつまで対抗手段になるかは分からないので、半ば諦めながら制作しなくてはいけないかもしれません。
終わりに
だいぶ不満たらたらですみません。
ただ、調べれば調べるほどにクリエイターが、自分があまりにも不利な状況であることが分かったので抑えられませんでした。
今後の展望は正直、暗いです。
だからこそこういったクリエイター側の記事は、多少間違っていたり自己中な内容となっていたりしていたとしても、ひとつでも多くあるべきだと考えて書きました。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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