【MIX学び直し】コンプレッサーとは?種類や使い方、使う際の注意点などについて
今回のMIX学び直しシリーズは、コンプレッサーです。
イコライザー並に魔境でしたが、どうにかブログとしてまとめる程度には私が理解できました。本当に難しい。
ぜひ最後までご覧ください。
※この記事では「パラレルコンプ」などのテクニックついては触れていません。
過去のMIX学び直しシリーズはこちら↓
【MIX学び直し】空間作りにおけるリバーブとは?ER、Pre-delayなどの設定の考え方
【MIX学び直し】オーバーサンプリングとは?どんな効果があるのか
【MIX学び直し】EQ(イコライザー)とは?使う際の注意点について
【MIX学び直し】ミキシングにおける「サチュレーション」とは?どんな効果があるのか、使い所はどこか
結論:コンプレッサーは上手く使えればかなり便利なエフェクター
コンプレッサーというのはただ「音を潰す」だけでなく、上手く使えば音が太くなる、耳障りなピークを丸くできる、ミックス全体のダイナミクスを整えられる、といった効果があります。
ところが大変厄介なことに、コンプレッサーというのは物凄い数と種類があり、かつパラメータが細かいので意味わからん!!となりがちです。
なので、コンプを上手く使うぞとなった場合は以下のことを気をつければ概ね大丈夫です。
- 「定番」と呼ばれるコンプを3種類(Vari-Mu、Opt、FETかVCAのそれぞれ1種ずつ)を持つ
- 種類の違うコンプレッサーそれぞれを適した楽器に使う
- ピークを抑えるのか、音のダイナミクスを整えるのかで使い分ける
- 単に音圧を上げる目的では使わない
- 過度なコンプレッションをしない
コンプの種類と適した楽器、適した使い方については後ほど書きますが、まずは定番のコンプ3つを使うようにすると、よりコンプへの理解が深まります。
逆に、よくわかっていないのにいきなりデジタルコンプに手を出すのはオススメしません。
狙って使わないと思っているような効果を得られないからです。
また、4,5についてはそもそも原音から音が大きく変化してしまう、音作りの領域になるからやめましょう。という話です。
コンプレッサーとは
コンプレッサーとは、音を圧縮(コンプレッション)を行うためのエフェクターのことです。
基本的には「設定した値よりも大きな音の音量をグッと下げる」といった動作になります。
一旦、ダイナミクスについてです。
ダイナミクスとは音の強弱のことのほかに「大きい音と小さい音の音量差」のことも指します。

画像の赤い線が大きな音、緑の線が小さい音ですが、その差をダイナミクスと呼びます。
このダイナミクスを瞬間的に減らす(減衰)ことで音のピークを削ったり、緩やかに減らすことで音量が平均的になったりします。
またコンプは使い方次第では音が太くなるのですが、そちらに関しては後ほど解説します。
コンプレッサーの各種パラメータ
アナログ系のコンプには一部無い(正確には表にないだけで内部で設定されている)パラメータもありますが、概ねコンプのパラメータは以下の通りです。
レシオ – Ratio
スレッショルドを超えた音をどれくらい減衰するか、という比率のことで、2:1の場合は超えた分の音量を1/2dBにする、という意味になります。
たとえば2:1のとき、スレッショルドを1dB超えた信号は0.5dBだけ減衰されます。
ほとんどのコンプで”Reduction(どれくらい削ったかを示すメーター)”があるので、手元で計算しなくても大丈夫です。
ちなみに、デジタルコンプにある「無限(Infinite):1」は、超えた分を完全にスレッショルド以上にならないよう潰します。
スレッショルド – Threshold
日本語では閾値(しきいち)と呼び、何dB超えたらコンプレッサーを作動させるか、という値のことです。
-10dBの入力信号に対し-13dBのスレッショルドを設定すれば、超過分の「3dB」に対してコンプレッサーが作動します。
これは見落としがちなんですが、使っているコンプの閾値がPeakに対してなのかRMSに対してなのかだけ注意してください。
アタック – Attack
スレッショルドを超えた音のコンプレッションが完了するまでの時間、という設定です。
通常はms、1/1000秒で設定します。
- アタックが0ms:スレッショルドを超えた瞬間にコンプレッションが完了する
- アタックが10ms:スレッショルドを超えてから10msをかけてコンプレッションを完了させる
リリース – Release
入力された信号の音量がスレッショルドを下回ったあと、どれくらい時間を掛けてコンプレッションを終えるか(元の音量に戻るか)までの時間です。
動きとしてはアタックの逆で、単位はアタックと同様にmsが一般的です。
たとえばリリースが80msの場合、スレッショルドを下回ってから80ms後にコンプレッションが終わり、元の音量に戻ります。
ニー – Knee
音量の減衰の特性を決める数値で、0~1で決められます。
0はハードニー、1はソフトニーとなり、ソフトに近づくにつれてコンプレッションがスムーズにかかるようになります。
- 瞬間的に音量を下げたい、ピークを抑えたい:ハードニーでアタックとリリースは早め
- ゆるくコンプをかけたい、平均的にしたい:ソフトニーでアタックとリリースは遅め
上記のように設定するのが効果的です。
ゲイン(インプット、アウトプット)
コンプレッサーに入る音量の調整がInput Gain、コンプレッションをかけた音量をどれくらいにするかがOutput Gainです。
コンプレッサーによって大きい音を減衰させたあと、Outputを上げることで、全体的に音量を上げる、といった使い方もできます。
コンプレッサーの種類
ここからはコンプレッサーの種類について紹介、解説します。
アナログ系5種、デジタルの合計6つです。
Vari-Mu(Tube) – 真空管
Vari-Muとは音の減衰機構に真空管を採用したコンプレッサーのことです。
入力信号が入ると真空管の電流供給量が減り、出力が弱くなるという仕組みで、一般的には「暖かいサウンド」が得られます。
- ソフトニー(ゆるい)のコンプレッションがかかる
- アタックやリリースが遅め(アタック800μs、リリース2秒~とか)
- 音の厚み、暖かみに関連する第2倍音が生成される機種が多い
といった特徴があり、ミックス全体を整えたり、バイオリンなどの鋭く耳につく音を和らげたりできます。
有名なVari-Muコンプは”Fairchild”, “Manly – Vari Mu”などがあります。

Fairchildはレシオのコントロールがないコンプです。
実機のマニュアルには「内部トリムで2~30:1まで」を変更できるとありますが、プラグインだと設定はできないっぽいです。
その代わりKneeの設定ができる小さいトリムがあり、ハード〜ソフトまで自分で設定できます。
そういった細かい設定こそできますが、基本的にはイン・アウトのゲイン、スレッショルド、”TIME CONSTANT”というアタック・リリースのセットを6段階で切り変えるツマミをいじるだけでOKです。
Optical – 光学式
Optは光を利用して圧縮するコンプレッサーのことです。
コンプ内部で入力信号を光に変え、光を検知するセンサーが明るさに応じて信号を減衰させます。
丸みを帯びた平均化された音にしやすい、キツくかけても自然な減衰になる、という特徴があります。
レシオ、アタック、リリースといったパラメータを設定できない機種が一般的ですが、一部弄れるようにした機種もあるようです。
ピアノやギター、ボーカルの調整に適しており、思いっきりかけて音を平均化するとリードに適したダイナミクスにできます。
ちなみにLA-2Aは右側のPEAK REDUCTIONがスレッショルドに相当する部分で、左のGAINはアウトプットゲインに相当する部分だそうです。
なので右でどれくらい潰すかを決めて、左で最終的な音量を決める、と使うのが普通だそうです。
レシオ、アタック、リリースなどを細かく設定する必要がないので、融通こそ効きませんが、直感的に使えるのが良い点です。
FET – トランジスタ
電界効果トランジスタのことで、トランジスタのG(ゲート)に掛かる電圧によってS(ソース)、D(ドレイン)の間の電流を制御するという機構になっています。
ちょっと複雑な感じがしますが、これは真空管の回路をエミュレートするように作られているので、サウンドも結構似ています。
特徴としては、
- パンチが効いた音を作りやすい、音に厚みを増やせる
- アタック、リリースは「マイクロ秒」で設定できる、かなり速い応答のコンプレッサー
というのが挙げられます。
マイクロ秒(μs)は1/1000msなので、他のコンプと比べて遥かに反応が速いです。
ピークが強くなりがちなドラム、ルームマイクのコンプレッションに適しており、アグレッシブなボーカルにも合います。
また歪ませたギターとの相性がよく、素早くぎゅっと圧縮してよりパワフルなサウンドメイクができます。
他にも、ドラムといった瞬間的にピークが大きくなりがちな楽器をFETで抑え、Optでスムージングをする、といった使い方もできます。
1176の良い点は、レシオを4段階の中からしか選べない点です。
4, 8, 12, 20の4つですが、12~20:1はほぼリミッターなので、基本的には4:1か8:1のどちらか適切な方を選べば良いです。
注意点として、ATTACK、RELEASEのツマミは通常と逆で、右が最速、左が最遅となることが挙げられます。
速いコンプをかける場合はA,R共に右に回してください。
詳しくは説明書をご覧ください。
VCA – 電圧制御増幅
VCAとは音声信号とコントロール信号を入力し、コントロール信号によって音声信号の音量を変化させる回路のことです。
FETよりは遅いんですが、アタック、リリースが非常に速いことが特徴で、他と比べて詳細に設定できるクリーンなコンプレッサーでもあります。
Vari-MuやOptなどは仕組み上、FETはVari-Muを模していることから、挿すだけでどうしてもサチュレーション効果が付与されます。
対してVCAはサチュレーションを生まないので、信号をクリーンな状態に保てます。
そのため単にコンプレッションをかけて調整するだけでなく、VCAでクリーンな状態で整えた後にOptなどで色付けする、といった使い方もできます。
dbx160、Distressor、SSL BUS Compなどが有名です。

SSLのチャンネルストリップについているコンプ(画像右上)はほぼVCAだそうです。
アタックの速さの調整が2段階しかないのはかなり潔いですね。
レシオ2~8:1の間で、アタック・リリース共に速めでピークを抑えるか、アタック通常・リリース80msでダイナミクスを適度に抑えるか、という2択で使うのがシンプルかつ効果が分かりやすいのでオススメです。
Diode Bridge – ダイオード
ダイオードをリング状に囲う回路になることから「ダイオード・リング」とも呼ばれる機構のコンプレッサーです。
ダイオードの性質を利用して、直流電圧で交流インピーダンスを変化させ、入力信号のレベルをコントロールするという仕組み…だそうです。工学はすみません、あまりよくわからず。
Vari-Muのようにアタック、リリースは遅く、サチュレーション効果が付与されるので太く厚みのある音になります。
ドラム、ロック系のギターなどの調整、厚みを増加に適しています。
ただしこのコンプは数が少なく、プラグインのコンプだとNeve33609、Lindell Audioなどがあります。
もちろんDiode Bridgeにしか出せない音はあると思うのですが、Vari-Muに似ているので、どうしても欲しい人向けになってしまいますね。
Digital – デジタルコンプ
デジタルコンプはコンプの各種パラメータを自分で設定できるものが一般的です。
DAW純正のコンプレッサー、fabfilter Pro-C3などが有名です。
ここまで紹介してきたコンプレッサーとは違って、レシオが1:1〜無限:1だったり、アナログコンプにはない”Knee”を設定できたりと、とにかく自由度が高いのが特徴です。
そのため、コンプレッサーを十分に理解していないとどう設定するのが最適なのかが分かりにくいので、デジタルコンプは初心者向けじゃないとも言えます。
アナログ系コンプは諸々の設定を済ませた状態からスタートしているので、まずはアナログ系を適材適所に使い、各種パラメータのちょうどいい具合がわかってきたらデジタルも使ってみる、とした方が理解が深まるかと思います。

どのコンプをどのタイミングで使えば良いか
色々と種類や特徴を紹介したのでまとめると、以下のようになります。
スネアなどピークがドンと出た時の調整
- FET、VCAなどの応答が速いコンプレッサー
- アタック、リリースを速めに設定する
スレッショルド、レシオをどれくらいにするかと言うのは正直好みの話になるので深くは言及しませんが、スレッショルドはピークよりも-2~3dB、レシオは3~6:1くらいで調整し始めると程よくなります。
ピアノ、ギター、ボーカルなどメインで聴かせたいトラックのダイナミクスの調整
- Vari-Mu、Opticalなど応答が遅いコンプレッサー
- アタック、リリースを遅めに設定、スレッショルドもかなり下げて大胆に減衰させる
バイオリンなどの耳につく帯域を含む楽器や、2mix全体の音量を整えたい時にもVari-Mu、Optがオススメです。
以上から、持っておきたいコンプレッサーはVari-Mu、Opt、FETかVCAを1つです。
Vari-MuとOptは使い道こそ似ていますが、設定できるパラメータが全然違うのでできればどちらも用意して使い分けたいところです。
またこの中でVCAのみ「サチュレーション効果がないクリーンなコンプ」なので、欲を言えばFETとVCAはそれぞれ持っておくと使い分けができるのでオススメです。
コンプレッサーを使う際の注意点
コンプを使う上で気を付けておきたい点が2つあります。
- 潰しすぎると音が引っ込んだ印象になる
- アタック・リリースの速いコンプは音が歪む
それぞれ解説します。
潰しすぎると音が引っ込んだ印象になる
具体的にどのくらい潰すと引っ込んだ印象になるか、というのはアタック、リリース、ニーなどの要素によって異なります。
が、目安として「-3dBほどリダクションすると音が急激に引っ込む」印象を受けるかと思います。
聴覚の話を一旦挟みます。
人間の聴覚は「10dB上がると聴覚的には2倍の音量増加」に感じ、音圧だけでいうと「3dB上がると音圧は2倍増加」だそうです。
参考:騒音値について|小西エア・サービス
10dBのリダクションは聴覚としては1/2倍の音量になるので流石に引っ込みすぎですが、実際に3dBの差が生まれると聞こえ方としては変化があるように感じられます。
1~2dB程度の差は言われてみたら変化したかも…?くらいです。もちろん音源によります。
コンプレッションで-3dBのリダクションがあるとやはり音量の変化を感じてしまい「音が引っ込んだな」という印象を受けてしまいます。
強く引っ込んだかどうか感じるのはコンプのアタック、リリース値によって変わります。
以上から、目安として-3dBよりも多くリダクションする時は気をつけた方が良いでしょう。
ただ、Optコンプのような遅いコンプで-6dBほどリダクションしダイナミクスをグッと減らすと、強い引っ込み感もなくほぼ一定の音量に感じられるような調整ができることもあります。
もちろんVari-MuやOptであっても、急な音量差が生じたら引っ込んだような印象は受けてしまいます。
結局のところは自分の耳で判断するしかないのですが、音が引っ込んだなーと感じる目安は-3dBというのをなんとなく頭に入れておくといいかと思います。
アタック・リリースの速いコンプは音が歪む
コンプレッサーは音をリダクションするものですが、リダクションした結果として音が歪む、というのは覚えておくと良いです。
少し実験をしました。

これはReaper純正のデジタルコンプで、画像だと見ての通りでまだコンプレッションを掛けていない状態です。
後ろのアナライザーでは特に変わり映えのない単一のサイン波を映しています。

スレッショルドを下げて、-0.2dBと本当に少しだけリダクションしました。
すると、本来はないはずの倍音が生成されています。
これは「エフェクト処理後の波形が元の波形と形が異なる場合、差異で倍音が生成されてしまう」という波の特性から生まれた倍音です。
完全にデジタル信号処理の分野になってしまい話がだいぶ難しくなるので割愛しますが、コンプを掛けると歪むんだな、と覚えておいてください。

また、理屈だと「1振動あたりの秒数よりも速いコンプがかかると歪み量が増える」と言われています。
鳴っている音は440Hzで1振動あたりおよそ2.2msくらいなので、アタック・リリース共に2.2msよりも速めたところ、明らかに歪みました。
楽器の倍音はもっと複雑のためここまで細かく計算する必要はないので、これも単に速いコンプはすごく歪む、と覚えておきましょう。

逆にアタック・リリース共に緩くしました。想定としてはVari-Mu、Optの数値です。
すると倍音がかなり抑えられました。
以上から、
- コンプレッサーは少しでもリダクションすると倍音が生成される
- アタック、リリースの速いコンプは音が歪む
- 遅いコンプは歪みにくくなる
となります。
倍音が生成されるといっても音量としては原音の半分以下程度なので気にはなりませんが、別でサチュレーションをかけていると流石に聞いて感じる程度の倍音になるはずです。

歪みに関する注意点として、アナログ系のコンプはそもそもリダクションしなくても倍音が生成される、というのも覚えておきましょう。
倍音が増えるサチュレーション効果は確かに音抜けが良くなったり音に厚みが出たりしますが、ちゃんと管理していかないと単なる歪み、音の濁りになってしまいます。
歪みにくいコンプレッサーはあるのか
調べた感じ、実はあるみたいです。
デジタル信号処理の分野で「元の波形を綺麗に再現する処理」として、FFT処理やヒルベルト変換というものがあります。
その辺りの技術を使ったらしいデジタルのコンプレッサーが、プラグインとしてあるというのは調べて知りました。
ただ表立ってそのような紹介をしているわけではないので、ここでの紹介は控えます。違ったら困るし…。
また、アナログ系コンプにはデベロッパーがTHDというパラメータを用意している場合があります。
これはアナログ特有のサチュレーション効果を調整するもので、THDを上げるとサチュレーション効果がつきます。
THDがあれば下げることで余計なサチュレーションは抑えられるので、ここは適宜調整すると良いかと思います。
参考
以上がコンプレッサーについてです。
かなり奥が深く大変難しいのですが、ひとまず有名なアナログ系コンプをそれぞれ目的を持って使い分ければ、ひどく悩むといったことはないかなーと思います。
VCAかFETでピークを調整して、Vari-MuやOptでダイナミクスを整える。まとめるとこれだけです。
また、コンプを使った結果としてサチュレーションが掛かってしまうといった狙っていないトラブルも起こりうるので、「コンプはとりあえずかけりゃいい」というのはNGです。
最後に、この記事を書くにあたって参考にしたものを貼っておきます。
https://splice.com/blog/what-is-compression/
https://pulsar.audio/blog/variable-mu-compression-how-it-works-and-when-to-use-it/
https://wavesjapan.jp/articles/comp_whichione

